日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメイエバエ」の意味・わかりやすい解説
ヒメイエバエ
ひめいえばえ / 姫家蠅
[学] Fannia canicularis
昆虫綱双翅(そうし)目環縫(かんぽう)亜目ヒメイエバエ科に属する昆虫。体長5~7ミリの小形種。細長く扁平(へんぺい)な腹部をもつ。雄の腹部は細長く、基部節の両側は黄褐色を呈し、雌では鶏卵形で幅広く、暗灰色で斑紋(はんもん)を欠く。はねの中脈は一直線状。幼虫は普通のウジと異なり、全体に特徴ある棘(とげ)に覆われていて、動きは不活発である。便所、漬物の糠床(ぬかどこ)、みそ樽(だる)、ごみため、畜舎などに発生するが、比較的乾燥した部分を好む。成虫は家屋内に侵入し、電灯の紐(ひも)などの垂れ下がった物の周りを飛び回って、特有の飛び方をする。日本にはこのほかに、中脛節(ちゅうけいせつ)にこぶがあるコブアシヒメイエバエF. scalaris、雄の腹部が全体黒色のクロヒメイエバエF. priscaなど3種の近縁種が民家周辺に普通にみられる。世界中の温帯から寒帯にかけて約220種が分布する。
[倉橋 弘]