(読み)ヒ

デジタル大辞泉 「ひ」の意味・読み・例文・類語

ひ[五十音]

五十音図ハ行の第2音。硬口蓋の無声摩擦子音[ç]と母音[i]とから成る音節。[çi]
平仮名「ひ」は「比」の草体から。片仮名「ヒ」は「比」のつくりから。
[補説](1) 「ひ」は古くは両唇の無声摩擦子音[Φ]と母音[i]とから成る音節[Φi]であり、さらに奈良時代以前には[pi]であったかともいわれる。室町時代末までは[Φi]であったが、江戸時代に入り、[çi]と発音されるようになった。(2) 「ひ」は、平安時代半ば以後、語中語尾では、一般に[wi]と発音され、のち、さらに[i]と発音されるようになった。これらは、歴史的仮名遣いでは「ひ」と書くが、現代仮名遣いでは、すべて「い」と書く。

ひ[接頭]

[接頭]形容詞に付いて、いかにもそういう感じがするという意を表す。「弱い」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ひ」の意味・読み・例文・類語

ひ【ひ・ヒ】

  1. 〘 名詞 〙 五十音図の第六行第二段(ハ行イ段)に置かれ、五十音順で第二十七位のかな。いろは順では第四十四位で、「ゑ」のあと「も」の前に位置する。現代標準語の発音では、硬口蓋と前舌との間の無声摩擦音 ç と母音 i との結合した音節 çi にあたり、これを清音の「ひ」という。これに対して、「ひ」に濁点をつけた「び」は、両唇の閉鎖による有声破裂音 b の結合した音節 bi にあてられ、これを「ひ」の濁音という。また、「ひ」に半濁点をつけた「ぴ」は、両唇の閉鎖による無声破裂音 p の結合した音節 pi にあてられ、これを「ひ」の半濁音という。歴史的かなづかいでは、語中語末の「ひ」を i と読むことが多い。また「ひ」「び」「ぴ」はそれぞれ「ゃ・ゅ・ょ」を伴って、çja, çju, çjo; bja, bju, bjo; pja, pju, pjo を表わす。「ひ」の字形は「比」の草体から出たもの、「ヒ」は同じく「比」の半分をとったものである。ローマ字では、清音に hi, hya, hyu, hyo 濁音に、bi, bya, byu, byo 半濁音に pi, pya, pyu, pyo をあてる。

  1. 〘 名詞 〙 塗物などのわれめ。ひび
    1. [初出の実例]「十ぜんの位も日をばあらためて 燕口なる椀のかずかず〈利貞〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)二)

  1. 〘 接頭語 〙 形容詞の上に付けて、いかにもそういう感じがするの意を添える。「ひよわい」「ひごすい」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひ」の意味・わかりやすい解説

ひ(仮名)

五十音図第6行第2段の仮名で、平仮名の「ひ」は「比」の草体から、片仮名の「ヒ」は「比」の旁(つくり)からできたものである。万葉仮名には2類あって、甲類には「比、必、卑、賓、嬪、避、臂、譬(以上音仮名)、日、氷、飯、檜(以上訓仮名)」、乙類には「非、悲、斐、肥、飛、彼、被、秘、妃(以上音仮名)、火、樋(以上訓仮名)」などが清音に使われ、濁音仮名としては、甲類に「妣、婢、鼻、弭、彌、寐(以上音仮名のみ)」、乙類に「備、肥、飛、眉、媚、縻(以上音仮名のみ)」(「肥、飛」は清濁両用)、ほかに草仮名としては「(比)」「(飛)」「(日)」「(悲)」などがある。

 音韻的には/hi/(濁音/bi/、半濁音/pi/)で、硬口蓋(こうがい)無声摩擦音[ç](両唇有声破裂音[b]、両唇無声破裂音[p])を子音にもつ。上代では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。

[上野和昭]


鉱脈のこと。日本近世から鉱山用語として使われ始め、露頭から鉱脈に沿って採掘するときひ追(ひおい)またはひ延(ひのべ)などと称した。現在でも鉱脈を追って掘進する坑道をひ押(ひおし)坑道とよび、広く使われている。

[房村信雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【スプーン】より

…全長12~13cm,容量6ml。(4)コーヒースプーン 食後のデミタスカップに添えるもので全長7~10cm。【徳村 薫】
[日本,中国のさじ]
 中国,朝鮮半島,日本,それに中国の影響の強いベトナムでは,さじとはし(箸)が組み合わせて使用され,現在でも朝鮮語では両方を合わせてスジョ(匙箸)と呼ぶ。…

※「ひ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android