ビョルンソン(読み)びょるんそん(英語表記)Bjørnstjerne Bjørnson

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビョルンソン」の意味・わかりやすい解説

ビョルンソン
びょるんそん
Bjørnstjerne Bjørnson
(1832―1910)

ノルウェー劇作家、小説家、詩人。牧師の子として、東部山地のクビクネに生まれ、幼時から抜群の天分を示して指導者の性格を表す。ストライキの指導者として中学校を追放され、首都クリスティアニア(現オスロ)に出て大学受験のために予備校に通うころには、早くも青年の間に重きをなし、イプセン、ビニエらと知り合い演劇改革運動に乗り出したり、新聞を創刊して国民精神の高揚に努める。イプセンとは終生を通じての友であり、また競争者であった。1852年王立フレデリック大学卒業。56年にスウェーデンの旧都ウプサラで開かれた学生会議に出席して感銘を受けて帰国、直後に中世北欧の英雄に取材した戯曲『戦いの合間』(1857)を、翌年は小説『日向(ひなた)丘の少女』を書いて、早くも新文学の旗手となる。後者はことに北国の初々しい青年男女の悩みとあこがれを雄大な自然を背景に描いて、続く『アルネ』(1858)、『幸運児』(1860)などとともに、清純無比の青春小説、山岳小説として世界中に愛読された。しかし作者がスカンジナビア連合運動や、青年民主党の創立を通じて国民指導者の地位に上るに及び、初期の牧歌的作風はより急進的、社会的なリアリズムとなった。金の魔力を扱った『手袋』(1883)などはこの中期の社会劇で、二部の大作『人力以上』(1883~95)をその頂点とする。小説では『港に町に旗はひるがえる』(1884)、『マリイ』(1906)などが中・後期の代表作。晩年、国際舞台に進出、ドレフュス事件フィンランドポーランドなどの被圧迫民族のために奮闘、「人道の戦士」とたたえられ、1903年にはノーベル文学賞を受賞。彼の詩『しかりわれらはこの国を愛す』(われらが愛する山の国)は、ノルウェー国歌になっている。パリで客死すると、政府は軍艦を派遣して遺骸(いがい)を迎え、国葬をもって遇した。

[山室 静]

『小林英夫訳『アルネ』(岩波文庫)』『山室静訳『日向丘の少女』(角川文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビョルンソン」の意味・わかりやすい解説

ビョルンソン
Björnsson, Sveinn

[生]1881.2.27. レイキャビーク
[没]1952.1.25. レイキャビーク
アイスランドの政治家,外交官。初代大統領在任 1944~52)。1907年から弁護士として最高裁判所に在籍,1912年にレイキャビークの町議会議員となり,1918~20年に同議長を務めた。1914~16年と 1920年に国民議会(アルシング)議員。特使として 1914年にアメリカ合衆国,1915年にイギリスに派遣され,アイスランドとイギリスの間で初の通商協定を取りまとめた。1920~24年と 1926~41年に駐デンマーク公使を務め,数々の国際会議にアイスランド代表として出席した。アイスランドは 1918年に名目上の独立を達成しながらデンマーク王国の一部に位置づけられ,外交政策はデンマークが遂行していたが,1940年5月にドイツがデンマークを占領した結果,アイスランドはデンマークから完全に分離した。ビョルンソンは 1941年から 1943年の間に 3回アイスランドの統治者に選出され,デンマーク国王がアイスランドの国事に関して握っていた特権のすべてを引き継いだ。1944年にアイスランドが共和国になると同時に大統領に選出された。1945年と 1949年に無投票で再任され,在任中に死亡した。(→アイスランド史

ビョルンソン
Bjørnson, Bjørnstjerne Martinius

[生]1832.12.8. クビクネ
[没]1910.4.26. パリ
ノルウェーの詩人,小説家,劇作家。大学予備校時代にイプセンとともに文芸復興運動に参加。サガと当代ノルウェーの田園生活からインスピレーションを受け,新旧ノルウェーを結ぶ絆を強調した。大学時代,演劇の改革を志し,『戦いの合間』 Mellem slagene (1857) を発表。次いで『シネーベ・ソールバッケン』 Synnøve Solbakken (57) ,『楽しい少年』 En glad gut (60) など,雄大な自然を背景にした青年男女の愛を描いた小説を著わし,国民を熱狂させた。以後新聞発行や政治運動にも進出,隠然たる国民の指導者として,ノルウェーの「無冠の帝王」と呼ばれた。その後『破産』 En Fallit (75) をはじめとする一連の社会劇,思想劇を発表。小説では『神の道』 Paa Guds veie (89) など。ほかに詩集1巻があり,その1編が国歌になっている。晩年には社会主義者を自認,平和と国際理解のために尽力した。 1903年ノーベル文学賞受賞。

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