日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピクセレクール」の意味・わかりやすい解説
ピクセレクール
ぴくせれくーる
René Charles Guilbert de Pixérécourt
(1773―1844)
フランスの劇作家。メロドラマの大家。ナンシーの名門に生まれる。フランス革命で亡命、反革命軍に投じたが、恋愛沙汰(ざた)から父と衝突、パリへ戻り辛酸をなめた。喜劇『オーベルニュの子ら』Les Petits Auvergnats(1797)でデビュー、『ビクトールまたは森の子』Victor ou l'Enfant de la forêt(1798)の大成功で花形となる。『ケリーナまたはふしぎな子』(1800)など約110編を残した。多くイギリスホラー小説に取材し、展示・葛藤(かっとう)・解決の三幕に、少年や美女の薄幸、悪漢のたくらみ、善の勝利を案配、スペクタクルに仕立て、ブールバール(パリ北辺のタンプル大通りの俗称)の劇場で大衆の涙と熱狂をよんだが、筋が荒唐無稽(むけい)で人物も類型的すぎ、今日では顧みられない。
[岩瀬 孝]
『岩瀬孝・伊藤洋・佐藤実枝著『フランス演劇史概説』(1978・早稲田大学出版部)』