ピナコール(読み)ぴなこーる(その他表記)pinacol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピナコール」の意味・わかりやすい解説

ピナコール
ぴなこーる
pinacol

RR'C(OH)C(OH)R"Rという一般式で表される二価アルコールの総称である。また、それらを代表して一般式のすべての置換基メチル基であるテトラメチルエチレングリコールをさすこともある。この化合物アセトン還元により得られる。また、ベンゾフェノンをアルコール中で光照射するとベンズピナコール(C6H5)2C(OH)C(OH)(C6H5)2とよばれるピナコールが得られる。一般にピナコールは酸の作用により水を失いピナコリンとよばれる化合物に転位をおこす。ピナコールのエーテルには、光により分解してラジカルを発生させるものがあるので、近年、光を用いる印刷などのラジカル発生剤として利用される。たとえば次の反応である。


[徳丸克己]


ピナコール(データノート)
ぴなこーるでーたのーと

ピナコール

テトラメチルエチレングリコール
 分子式 C6H14O2
 分子量 118.2
 融点  43.2~43.4℃
 沸点  174.35℃
 比重  0.967(測定温度15℃)
 屈折率 (n) 1.4430

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改訂新版 世界大百科事典 「ピナコール」の意味・わかりやすい解説

ピナコール
pinacol

ピナコンpinaconeともいう。一般式RR′C(OH)C(OH)R″Rで表される二価アルコールの総称。R,R′,R″,Rアルキル基アリール基のもの,またRとR″とが結合して環を形成しているものが知られている。ケトンをマグネシウムアマルガムやナトリウムなどの還元剤で還元すると,2分子結合してピナコールを生成する。2種のケトンの混合物を用いると非対称のピナコールが得られる。中性結晶性化合物で,1,2-グリコールの性質を示し,希硫酸あるいは希塩酸によりピナコリン転位を起こしピナコリンになる。最も簡単なテトラメチルエチレングリコールをふつうにはピナコールという。

これはアセトンをマグネシウムアマルガムなどで還元すると生成し,水溶液から結晶化させると6水和物(融点45.4℃)が得られる。無水和物は6水和物の共沸蒸留によって得られる。融点43.2~43.4℃,沸点174.35℃。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピナコール」の意味・わかりやすい解説

ピナコール
pinacol

(1) 1,2-グリコールで,その1,2位の炭素原子がいずれも第三級炭素原子であるもの。この両炭素原子はアルキル基またはアリール基を結合し,あるいはいくつかの炭素原子を介して環状につながっていることもある。古くはピナコンと書かれたこともある。ケトンをマグネシウムアマルガムやナトリウムアマルガムによって還元するとき,その2分子が結合して生成する。ピナコールは無機酸により分子内転位反応を起し,ピナコロンとなる。これをピナコール転位という。 (2) テトラメチルエチレングリコール C6H14O2 をさす場合もある。アセトンの還元によってつくられ,酸化すると2分子のケトンを生じる。最も簡単なピナコールで,板状晶。融点 45℃ (6分子の結晶水をもつもの) ,38℃ (エーテルより再結晶したもの) 。熱水,エチルアルコールに溶ける。

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化学辞典 第2版 「ピナコール」の解説

ピナコール
ピナコール
pinacol

2,3-dimethyl-2,3-butanediol.C6H14O2(118.18).HOC(CH3)2C(CH3)2OH.金属ナトリウム,リチウム,マグネシウムアマルガムなどによる,アセトンの還元二量化により得られる.結晶.融点42~44 ℃,沸点174 ℃,85 ℃(2.8 kPa).1.4326.熱湯,エタノール,エーテルに可溶,水に難溶.六水和物は融点46~47 ℃.酸によりピナコール転位を起こし,ケトン(ピナコロン)に変化する.[CAS 76-09-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のピナコールの言及

【ケチル】より

…ラジカルであることは,電子スピン共鳴吸収(ESR吸収)がみられることからわかる。溶液中ではその二量体との間に平衡が存在しており,酢酸などのような薄い酸で処理するとピナコールになる。その平衡は溶媒,対をなす金属イオンなどにより変化する。…

※「ピナコール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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