日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィボナッチ」の意味・わかりやすい解説
フィボナッチ
ふぃぼなっち
Fibonacci
(1174ころ―1250ころ)
中世イタリアの数学者。ピサの貿易商ボナッチの子で、フィボナッチはボナッチの息子の意の俗称。レオナルド・ピサーノLeonard Pisanoともよばれる。商人として計算法を学び、商用も兼ねて各地を遍歴し、アラビア数学の知識を得た。
1202年『算術の書』を著し、後年改訂増補して大著『そろばんの書』Liber Abaciとした。この本はインド・アラビア式記数法、計算法、比例算から、級数や不定方程式にまで及ぶ。有名なフィボナッチ級数(フィボナッチ数列ともいう)は、1対のウサギがnか月で何対になるかというウサギの増殖問題としてその第12章に扱われている。ヨーロッパ各国で広く読まれ、位取り記数法の普及をはじめ、ヨーロッパの数学の発展に大きな影響を与えた。
ことばによる記号を使わない代数学は当時の水準を超えた優れたもので、むしろ15~16世紀の数学者に受け継がれた形である。1225年には神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世の挑戦を受けて数学の試合を行い、二次方程式や三次方程式の近似解を求めた。そのほか、幾何学や数論の著作もあり、傑出した学者であった。
[一松 信]