家庭医学館 の解説
ふぉんうぃれぶらんどびょう【フォン・ウィレブランド病 Von Willebrand Disease】
血漿(けっしょう)中には、フォン・ウィレブランドという因子(いんし)が含まれています。この因子は、血管内皮細胞(けっかんないひさいぼう)や骨髄巨核球(こつずいきょかくきゅう)でつくられる分子量の大きな糖たんぱくです。
フォン・ウィレブランド因子は、血管が傷ついて出血がおこったときに、血小板(けっしょうばん)が傷口に粘着して出血を止める際に必要な因子です。また、この因子は、凝固(ぎょうこ)第Ⅷ因子(血友病(ヘモフィリア)の「どんな病気か」)と結合し、第Ⅷ因子を安定させながら運搬する役目を合わせもっています。
このフォン・ウィレブランド因子が欠乏すると、血小板が傷口に粘着しにくくなるために、出血が止まりにくくなります。また、第Ⅷ因子が欠乏し、血液が固まりにくくなります。
先天的にこの因子が欠乏しているのがフォン・ウィレブランド病で、血友病B(「血友病(ヘモフィリア)」)と同じくらいの頻度で見つかります。
フォン・ウィレブランド病には、大きく分けて3つのタイプがあります。
タイプ1は、因子の質には異常のない、量の少ないタイプです。
タイプ2は、因子の質に異常のあるもので、さらに2A、2Bなどに亜分類されています。
タイプ3は、この因子が極端に少ない重症型です。
タイプ1とタイプ2の大部分は、常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)し、タイプ2とタイプ3の一部は、常染色体劣性(れっせい)遺伝します。もっとも多いのはタイプ1で、タイプ2とタイプ3はまれです。
[症状]
幼児期から、鼻出血(びしゅっけつ)、歯肉出血(しにくしゅっけつ)、消化管出血などがおこり、女性では、月経過多(げっけいかた)になることがあります。
血友病(けつゆうびょう)のように著明な出血傾向を示すものもありますが、まったく無症状で、外傷、抜歯(ばっし)、手術などの際に出血量が多いことで初めて気がつくことも多いものです。
●受診する科
小児科か内科を受診しますが、特殊な検査が必要なので、血液凝固学の専門医を紹介してもらうとよいでしょう。
[検査と診断]
血縁者のなかに出血症状を示した人がいたかどうか、過去の出血したときの状態などを問診で聞きますが、確実に診断するには出血傾向の検査が必要です。
血液を採取してさまざまな検査を行ないます。血小板数が正常なのに出血時間が延長することや、血小板粘着能(ねんちゃくのう)の低下、リストセチンによる血小板凝集能(ぎょうしゅうのう)の低下、活性化トロンボプラスチン時間の延長などといった凝固能(ぎょうこのう)の異常とともに、フォン・ウィレブランド因子抗原量(こうげんりょう)・活性などがすべて低下していることが証明されれば、診断がつきます。
また、凝固第Ⅷ因子活性の低下もみられます。
[治療]
タイプ1およびタイプ2Aの鼻出血・歯肉出血などの軽度の出血に対しては、血管内皮細胞からフォン・ウィレブランド因子を放出させる作用のあるホルモン(バソプレシン)の誘導体であるDDAVPを使用します。
タイプ3およびタイプ2BにはDDAVPは効果がなく、これらのタイプの出血時、およびタイプ1の手術時あるいは重症の出血に対しては、第Ⅷ因子製剤のうちで、フォン・ウィレブランド因子活性をもっている製剤を輸注します。