ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォ」の意味・わかりやすい解説
フォ
Fo, Dario
[没]2016.10.13. ミラノ
イタリアの劇作家,演出家,俳優。小劇場での風刺劇の執筆,出演から舞台の道に入る。1959年,妻で女優のフランカ・ラーメとともに劇団を創設。1962年テレビ番組『カンツォニッシマ』Canzonissimaでたちまち人気を博した。フォとラーメの風刺劇は徐々に政治的アジテーション(→扇動)の色合いを強め,ときに冒涜的であったが,伝統的なコメディア・デラルテに根ざし,フォのいう「非公式の左翼主義」を織り交ぜたものだった。1968年所属する共産党(→左翼民主党)の支援を受け劇団「ヌオバ・セナ」を設立した。1970年に離党し,劇団「ラ・コムーネ」を結成してミラノを拠点に活動した。約 70編の戯曲を書き,代表作に『アナーキストの事故死』Morte accidentale di un anarchico(1974),『払えないの? 払わないのよ!』Non si paga, non si paga!(1974)があり,後者は日本でも 1985年劇団民芸により上演された。俳優としては,中世の神秘劇を下敷きにした『ミステーロ・ブッフォ』Mistero Buffo(1973)で最もよく知られる。アジテーションに天賦の才をもったカリカチュアリスト(→カリカチュア)であり,しばしば当局からとがめを受けた。しかしその作風は 1997年「笑いと厳粛さを調和させた作品により,社会の悪弊と不公正に目を開かせた」として評価され,ノーベル文学賞(→ノーベル賞)を授与された。(→イタリア演劇)
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