改訂新版 世界大百科事典 「フジウツギ」の意味・わかりやすい解説
フジウツギ
Buddleja japonica Hemsl.
日当りのよい山地の河岸などにはえるフジウツギ科の落葉性の低木。有毒植物で,魚を麻酔させる作用がある。高さ60~150cm,枝に翼がある。葉は対生し,長楕円形,長さ8~20cm。花は,枝の先の長さ10~30cmで先のたれ下がった花穂に総状につき,7~9月に一方に偏って咲く。花は4数性。花冠は細い筒状で,長さ1.5~1.8cm,紅紫色,毛が密生する。子房は上位,2室で各室に多数の胚珠がつく。果実は長卵形,長さ約1cm。本州と四国に分布する。日本南部産のウラジロフジウツギB.curviflora Hook.et Arn.f.venefera(Makino)Yamazakiは魚毒として使われる。ニシキフジウツギ(一名フサフジウツギ)B.davidii Franch.(英名orange-eye butterfly bush)は一般にブッドレアの名で観賞用に植えられ,ときに野生化する。花冠にほとんど毛がなく,中国南西部からチベットの原産。ほかにも数種が園芸植物として栽植され,交配雑種も育成されている。この仲間は,精油やサポニンを含み有毒植物として有名。中国では花や茎葉が薬用にされる。
フジウツギ科Buddlejaceaeは約10属150種あり,おもに熱帯に分布する。これまでマチン科に入れられていたが,維管束が複並立でなく,腺毛などをもつこと,葉は普通鋸歯や切れ込みがあるなどにより区別され,胚乳形成,胚発生,訪花昆虫などからゴマノハグサ科との類縁が指摘されている。
執筆者:福岡 誠行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報