フッ化ウラン(読み)ふっかウラン(その他表記)uranium fluoride

改訂新版 世界大百科事典 「フッ化ウラン」の意味・わかりやすい解説

フッ(弗)化ウラン (ふっかウラン)
uranium fluoride

フッ素とウランの化合物で,ウランの酸化数Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵの化合物が普通に知られている。

化学式UF3。フッ化ウラン(Ⅳ)UF4を金属アルミニウムあるいはウランと熱して得られる。黒色六方晶系の結晶。比重9.18。融点1427℃。水に不溶。冷水中では徐々に酸化され,緑色ゼラチン状となる。熱水には分解して溶ける。熱硝酸には易溶。

化学式UF4酸化ウラン(Ⅳ)UO2をフッ化水素気流中550~650℃に熱して還元するか,フッ化水素アンモニウムNH4HF2を150℃に熱して2UF4・NH4Fとし,これをさらに450℃に熱すると得られる。無水和物は緑色粉末。比重6.70。融点1036℃。真空中では昇華する。酸には溶けないが,酸化力のある酸には溶ける。2.5水和物は斜方晶系の結晶。

化学式UF5無色ないし淡青色の結晶。融点348℃。五方双錐の五角形の1辺を共有して鎖状に連なった多量体構造。

化学式UF6ボンベに詰められた市販品もある。フッ化ウラン(Ⅳ)UF4,酸化ウラン(Ⅳ)UO2あるいは八酸化三ウランU3O8などをフッ素と加熱下反応させ,生じた気体を-80℃に冷却すると得られる。無色斜方晶系。昇華しやすく(昇華点56.5℃),常温では固相と気相との平衡状態にある(20℃での蒸気圧約80mmHg)。三重点は64.01℃(1134mmHg)。水では常温で容易に加水分解してUO2F2フッ化水素酸になる。有機物と反応すると還元されてフッ化ウラン(Ⅳ)UF4となる。UF6は,気体の拡散を利用して238Uから235Uを分離するのに十分な揮発性をもつ唯一の化合物であって,この目的のために大規模に生産されている。
ウラン濃縮
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「フッ化ウラン」の解説

フッ化ウラン
フッカウラン
uranium fluoride

三,四,五および六価のウランのフッ化物が知られている.【】フッ化ウラン(Ⅲ):UF3(295.0).三フッ化ウランともいう.水素,アルミニウム,ウランなどを用いて高温でフッ化ウラン(Ⅳ)を還元すると得られる.赤紫色の六方晶系結晶.融点1427 ℃.1000 ℃ 以上で徐々に分解する.水に不溶,冷たい酸には徐々に溶け,熱硝酸に易溶.高温では金属ウランとフッ化ウラン(Ⅳ)に分解する.[CAS 13775-06-9]【】フッ化ウラン(Ⅳ):UF4(314.0).四フッ化ウランともいう.
(1)酸化ウラン(Ⅳ)にフッ化水素を作用させる,
(2)フッ化ウラニルをフッ化水素存在下塩化スズ(Ⅱ)で還元する,
(3)酸化ウラン(Ⅵ)をフレオンで還元する,
などにより得られる.緑色,吸湿性の単斜晶系結晶.1100 ℃ 以上で分解する.水に不溶.酸化力のある酸に溶解しウラニルイオンを生じる.フッ素と250 ℃ で反応しフッ化ウラン(Ⅵ)を生成する.[CAS 10049-14-6]【】フッ化ウラン(Ⅵ):UF6(352.0).六フッ化ウランともいう.フッ化ウラン(Ⅳ),酸化ウラン(Ⅳ),ウラン金属などとフッ素とを反応させると得られる.工業的にはUF4にフッ素を反応させる.無色の斜方晶系結晶.三重点は64.01 ℃(1517 hPa).常温では固相-気相平衡状態にあり,18 ℃ における蒸気圧は約130 hPa.たやすく揮発させることのできる唯一のウラン化合物で,ウラン同位体の分離に利用される.容易に加水分解して,フッ化ウラニルとフッ化水素を生じる.水素と常温で反応し,フッ化ウラン(Ⅳ)とフッ化水素を生成し,またリン,ヒ素炭素なども還元剤として作用し,フッ化ウラン(Ⅳ)を生成する.水銀ナトリウムなどの金属と常温で反応する.通常の有機溶媒と反応する.[CAS 7783-81-5]【】そのほか,UF5,U2F9,U4F17などの中間のフッ化物が知られており,これらはフッ化ウラン(Ⅳ)とフッ化ウラン(Ⅵ)との反応,そのほかによってつくられる.これらのフッ化物は,きわめて容易に不均化する.たとえば,

3UF5 U2F9 + UF6

である.[CAS 13775-07-0:UF5][CAS 12134-48-4:U2F9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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