フデリンドウ(読み)ふでりんどう

百科事典マイペディア 「フデリンドウ」の意味・わかりやすい解説

フデリンドウ

リンドウ科の二年草。北海道〜九州,東アジアの山野日当りのよいところにはえる。茎は高さ5〜10cm,根出葉はなく,茎葉卵円形で接近して対生する。春,茎頂に数個の花を開く。花冠は青紫色,長さ2〜2.5cm,筒状で先は5裂し,各裂片の間に小副片がある。果実は花冠から長く突き出し,2片に裂けて多数の種子を出す。近縁のハルリンドウは本種に似るが,大型の根出葉があり,数個の花茎を出して頂に1花を開く。コケリンドウは根出葉の間から多数の茎を束生。葉も花も小型。本州,北海道の高山帯にはえるミヤマリンドウは多年生で,根出葉がなく,7〜8月に咲く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フデリンドウ」の意味・わかりやすい解説

フデリンドウ
ふでりんどう / 筆竜胆
[学] Gentiana zollingeri Fawcett

リンドウ科(APG分類:リンドウ科)の越年草。茎は高さ5~10センチメートル。茎葉は密接して対生し、広卵形で質は厚く、縁(へり)は白色で微突起がある。根出葉は花期にはない。3~5月、茎上部に花を1~8個、日を受けて上向きに開く。花冠は青紫色、裂片の間に副片がある。丘陵から山地雑木林野原に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国、樺太(からふと)(サハリン)、南千島に分布する。名は、花の閉じた形が筆の穂先に似ることによる。

[高橋秀男 2021年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フデリンドウ」の意味・わかりやすい解説

フデリンドウ(筆竜胆)
フデリンドウ
Gentiana zollingeri; gentian

リンドウ科の越年草で,東アジアの温帯に広く分布する。日本各地の日当りのよい山野に生える。茎は高さ5~10cmぐらいで直立し,なかほどから上に葉をつける。葉は密に対生し,長さ 1cm前後の広卵形で小さく,全縁でやや厚い。4~5月に,茎に頂生して数個の青紫色の花をつける。萼は緑色で5裂し,花冠は長さ 2cmあまりの長い鐘状で裂片5個の間に副裂片がある。 蒴果は長い柄があり,中に小さい種子を多数含む。

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世界大百科事典(旧版)内のフデリンドウの言及

【リンドウ(竜胆)】より

…形態変化が多く,地域変異品にホソバリンドウ,ツクシリンドウ,キリシマリンドウ,クマガワリンドウなどの名がつけられている。 日本産のリンドウ類は,リンドウ属,タカネリンドウ属,チシマリンドウ属,サンプクリンドウ属の4属に分けられ,リンドウ属Gentiana(英名gentian)には,高山性のオヤマリンドウG.makinoi Kusn.,エゾリンドウG.triflora Pall.var.japonica (Kusn.) Hara,花が淡黄色のトウヤクリンドウG.algida Pall.(イラスト),高山性で小型のミヤマリンドウG.nipponica Maxim.,また一,二年草で草地に生えるフデリンドウG.zollingeri Fawc.(イラスト)やコケリンドウG.squarrosa Ledeb.,湿地に生育するハルリンドウG.thunbergii (G.Don) Griseb.(イラスト)などがある。 トウリンドウは根茎および根に苦味配糖体ゲンチオピクリンgentiopicrine,ゲンチアニンgentianineなどの苦味成分を含み,漢方では竜胆(りゆうたん)とよばれ,苦味健胃薬として用いられ,また他の生薬と配合して,解熱,肝炎,咽喉炎,中耳炎,高血圧,尿道炎などにも用いられる。…

※「フデリンドウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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