ハナシノブ科(APG分類:ハナシノブ科)フロックス属の総称。一年草または多年草。耐寒性のものが主であるが、半耐寒性のものもある。葉は全縁で対生するが、上部で互生となることもある。花は葉腋(ようえき)に単生、または茎頂に叢生(そうせい)し、集散花序または円錐(えんすい)花序をなす。花色は緋紅(ひこう)、青、桃、白色などで、萼片(がくへん)は細長い釣鐘形で先端は5裂する。北アメリカに約50種、シベリアに1種分布する。高性の多年草であるオイランソウ(花魁草)P. paniculata L.や一年草のキキョウナデシコ(桔梗撫子)P. drummondii Hook.、ロック・ガーデンや庭植えなどに多く利用されるシバザクラ(英名モス・フロックス)P. subulata L.をはじめ、匍匐(ほふく)性のものから直立矮性(わいせい)種まで、多くの種類が知られる。花壇、鉢植え、切り花用と利用法も多い。オイランソウはクサキョウチクトウ(草夾竹桃)ともいい、花の香りが花魁(おいらん)のおしろいに似ることから名がついた。北アメリカ原産で、日本には大正初期に渡来したとされる。高さ1メートルで、花期は6~9月。庭植え用であるが、最近は切り花に、また矮化剤利用の鉢物として注目され、すばらしい園芸種が出てきた。品種数は300種近いとされ、耐寒性が強く、つくりやすい。キキョウナデシコは北アメリカのテキサス原産で、高さ15~50センチメートル。このほか、ロック・ガーデン用として数種類みられる。
栽培は容易で、日当り、排水、通風のよい所に石灰を施す(石灰質を好む)。春または秋、株間40センチメートルで定植し、3~4年植え替えないでよい。繁殖は株分け(4月)、挿木(5月)のほか実生(みしょう)もできる。なおキキョウナデシコは、暖地では9月中旬に播種(はしゅ)し、10月中旬に株間20センチメートルで定植、寒地では苗床を防寒して3月中旬に定植する。とくに寒い所は3~4月播(ま)きがよい。
[魚躬詔一 2021年3月22日]
北アメリカの温帯地方に約50種,シベリアに1種が分布しているハナシノブ科フロックス属Phloxの総称。一年草または多年草で,美しい花を春から夏にかけて咲かせ,多くの種が花壇,ロックガーデン,切花に利用される。茎が直立するクサキョウチクトウや匍匐(ほふく)するシバザクラなど生活型に違いがある。クサキョウチクトウ,シバザクラなどの多年草は耐寒力が強く露地で越冬するが,一・二年草のキキョウナデシコは日本では冬季霜よけを必要とする。
キキョウナデシコP.drummondii Hook.(英名annual phlox,drummond phlox)は北アメリカのテキサス地方原産で,草丈15~30cmになる。葉は下部では広卵形で対生するが,茎の上部では互生する。花は茎頂の集散花序に多数集まって咲く。高杯状で5裂して裂片はほぼ五角形に平開する。花色は原種では桃紅色であるが,園芸品種は紅,ピンク,サケ肉色,紫,クリーム,黄,白などと豊富である。果実は球形で,種子が熟すと蒴果(さくか)は裂開し,種子が飛び散る。採種は摘みとり法による。変種のホシザキ(星咲き)フロックスvar.stellalis Voss(英名star phlox)は花冠の裂片が細く3~5裂して星形に咲く。花色は豊富で,花壇や鉢植えによい。種まきは9~10月,幼苗は露地の育苗床で小鉢植えで養成するが,霜よけの必要がある。開花は5~6月。寒地では春まきして夏に開花させる。
執筆者:浅山 英一
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