知恵蔵 「ブックオフ」の解説
ブックオフ
ブックオフでの本の売上が年間220億円を超えるなど新古書店が存在感を増す中、既存の出版・書店業界は、「新古書流通の拡大が、コミックをはじめ新刊売上の足を引っ張っている」「盗品もすぐに買い取り現金化するので、近隣にある新刊書店からの万引きを誘発している」と反発。それに対し、「新古書を買った人が、その作家や漫画家の新刊を買うこともある」「盗品かどうかを見分けるのは無理」といった反論もなされてきた。
そうした中、09年5月、大日本印刷グループと講談社・集英社・小学館の出版大手3社がブックオフ株取得を発表し、業界を驚かせた。印刷業界最大手の大日本印刷は、主婦の友社との提携、図書館流通センター・丸善・ジュンク堂の子会社化と、出版の上流から下流までを押さえ、印刷・出版不況が長引く中で出版業界再編に乗り出したと見られる。
出版社側が「コミックも含め価値を創造する者へのリターンを」と求めていることに対し、ブックオフは「中古本に著作権は及ばない」とするなど出版社と新古書店の溝は依然深いが、多様な読者ニーズを満たし文化を支えていくためにも、「捨てない人のインフラをつくる」というブックオフの理念と、出版・著作活動が再生産されるための適正利益を折り合わせる工夫が問われている。
(北健一 ジャーナリスト / 2009年)
Book off
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出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報