大日本印刷(読み)だいにっぽんいんさつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大日本印刷」の意味・わかりやすい解説

大日本印刷(株)
だいにっぽんいんさつ

業界最大手の総合印刷会社。1876年(明治9)佐久間貞一(ていいち)らが創立した秀英舎が前身。従来の木版印刷にかえて活版印刷を採用、日本における近代的印刷業先駆となり、1894年に株式会社化した。1928年(昭和3)サダグ法を導入して日本初の本格的原色グラビア印刷を開始、1935年に日清(にっしん)印刷を合併して現社名に改めた。

 第二次世界大戦後は紙器、特殊印刷、精密部品プラスチックの各専門工場を建設、また1956年(昭和31)には木目化粧紙などの建材印刷を開始、1958年には腐食法によるカラーテレビ用シャドーマスク試作に成功した。1960年以降、海外から積極的な技術導入を進める一方、各地の印刷会社の系列化と営業網の拡充を図り、さらに1966年には大規模な研究所を建設、1978年に多色曲面印刷技術を開発した。1980年代からはエレクトロニクス分野に積極的に取り組み、ICカード、光カード、さらには電子出版ソフトの開発を行った。東南アジア、アメリカ、ヨーロッパなどの海外への進出も活発である。資本金1145億円(2008)、売上高1兆1801億円(2008)。2008年(平成20)現在国内事業所・営業所は68か所、海外21か所(現地法人含む)。

[中村清司]

『大日本印刷株式会社編・刊『七十五年の歩み 大日本印刷株式会社史』(1952)』『大日本印刷株式会社社史編集委員会編纂『大日本印刷百三十年史』『大日本印刷百三十年史 資料編』(2007・大日本印刷)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「大日本印刷」の意味・わかりやすい解説

大日本印刷[株] (だいにほんいんさつ)

売上高において日本のみならず世界でも1位の印刷会社。1876年に創業した日本で最初の本格的印刷企業であった秀英舎(個人経営)がその前身。なお,1935年まで使われた秀英舎の社名は〈英国より秀でるように事業を伸ばせ〉という意味で勝海舟が名づけたものである。秀英舎は,明治の三大名著の一つといわれる中村正直の《西国立志編》の再版の際に《改正西国立志編》として,それまでの木版に代えて日本で初めて活版印刷を行った。新聞,雑誌などの活版印刷を中心に,明治,大正の両時代を通して発展したが,1928年には日本で初めて本格的グラビア印刷を開始するなど印刷技術の高度化も進めて,総合印刷会社になった。昭和初期の恐慌のなかで印刷業界も苦境に陥り,35年秀英舎は日清印刷と合併し,大日本印刷(株)と改称した。第2次大戦後は日本経済の発展とともに事業は急成長した。さらにまた印刷技術を基礎に包装,建材,プラスチック,電子精密部品などへ積極的に進出し,事業の多角化が進んでいる。資本金1145億円(2005年9月),売上高1兆4249億円(2005年3月期)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「大日本印刷」の意味・わかりやすい解説

大日本印刷[株]【だいにっぽんいんさつ】

印刷会社。1876年佐久間貞一が秀英舎を創業,活版印刷業の先駆となる。1935年日清印刷と合併して現社名。書籍,雑誌のほか,第2次大戦後は商業印刷,特殊印刷などに進出して飛躍的に発展,業界の首位を占める。さらにエレクトロニクス,デジタル情報サービスにも進出し,印刷を超えた総合情報加工業へと転身している。製版技術応用のシャドーマスクでは世界的シェアを誇る。液晶・半導体関連のパネル生産も世界的。本社東京,工場東京市ヶ谷ほか。2011年資本金1144億円,2011年3月期売上高1兆5893億円。売上構成(%)は,情報コミュニケーション45,生活・産業33,エレクトロニクス18,清涼飲料4。海外売上比率12%。
→関連項目印刷業出版デジタル機構凸版印刷[株]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大日本印刷」の意味・わかりやすい解説

大日本印刷
だいにっぽんいんさつ
Dai Nippon Printing Co., Ltd.

印刷会社。1876年秀英舎創業,1894年株式会社に改組。1935年日清印刷を合併して現社名に変更。1956年日本精版を合併,1972年二葉印刷を吸収合併。凸版印刷と並ぶ業界の大手で,一般印刷物,紙器,ポリエチレン,金属類などへの特殊印刷のほか写真製版技術を応用したカラーテレビ用のシャドーマスクや集積回路 IC用フォトマスクなども生産,さらに情報,教育産業へも進出するなど,その経営規模はアメリカ合衆国のダネリー・アンド・サンに次いでいる。海外進出も盛んで,アメリカ,ドイツ,オーストラリア,インドネシア,中国などに営業拠点をもつ。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本の企業がわかる事典2014-2015 「大日本印刷」の解説

大日本印刷

正式社名「大日本印刷株式会社」。略称「DNP」。英文社名「Dai Nippon Printing Co., Ltd.」。製造業。明治9年(1876)前身の「秀英舎」創業。同27年(1894)株式会社化。昭和10年(1935)現在の社名に変更。本社は東京都新宿区市谷加賀町。印刷会社。印刷業界最大手。液晶フィルターなど精密電子部品の製造も手がける。東京証券取引所第1部上場。証券コード7912。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android