日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぶどう石」の意味・わかりやすい解説
ぶどう石
ぶどうせき / 葡萄石
prehnite
層状珪(けい)酸塩鉱物の一つ。斜方短柱状ないし菱餅(ひしもち)状の結晶形を示すが、多くは結晶面が湾曲し、さらにそれらが多数集合してブドウ状の球塊をつくる。また塊状、脈状をなす。斜方晶系のものが普通であるが、一部に単斜晶系がある。変成した塩基性ないし中性火成岩中に、ソーダ沸石、トムソン沸石、方沸石、ペクトライトなどと産する。空隙(くうげき)にはしばしば淡緑色球状の結晶集合体がみられる。アメリカのニュー・ジャージー州パターソン産のものは世界的に有名である。ほかに、スカルン中、花崗(かこう)岩ペグマタイト中、熱水鉱床中にも産する。変成岩の生成にかかわる変成作用の一定の温度・圧力条件(変成相)を分類する際、ぶどう石―パンペリー石メタグレイワッケ変成相(ぶどう石パンペリー石相)の指標となる鉱物としても重要。日本のおもな産地は島根県松江市美保関(みほのせき)町地区である。英名は、鉱物収集家でオランダの軍人プレーンHendrik von Prehn(1733―1785)にちなむ。和名は外観による。
[松原 聰]