ブルガリア語(読み)ブルガリアゴ(英語表記)Bulgarian

翻訳|Bulgarian

デジタル大辞泉 「ブルガリア語」の意味・読み・例文・類語

ブルガリア‐ご【ブルガリア語】

インド‐ヨーロッパ語族スラブ語派に属する言語ブルガリアほか、周辺諸国に話し手をもつ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ブルガリア語」の意味・読み・例文・類語

ブルガリア‐ご【ブルガリア語】

  1. 〘 名詞 〙 インド‐ヨーロッパ語族スラブ語派南スラブ語群に属する言語。ブルガリアのほか、ルーマニアの一部などで話される。キリル文字で表記される。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ブルガリア語」の意味・わかりやすい解説

ブルガリア語 (ブルガリアご)
Bulgarian

ブルガリア共和国の基本住民であるブルガリア人の言語。母語とする人口は国内に約775万人(1978)で,これは総人口の約88%にあたる。また,ほかに旧ソ連を主とする国外に約50万人程度のブルガリア系住民が推計されている。ブルガリア語はインド・ヨーロッパ語族スラブ語派に属し,マケドニア語とともに南スラブ語の東方分枝をなすが,南スラブ語としてセルビア・クロアチア語スロベニア語とも著しい親縁関係を示している。スラブ語派中最古の10世紀にさかのぼる文献を有するが,10~11世紀の古ブルガリア語Old Bulgarianはいわゆる古教会スラブ語(古代教会スラブ語)資料の中心をなし,当時の各地の正教徒スラブ人の共通の文語としての役割を果たした。現代ブルガリア語は,19世紀後半から20世紀初頭にかけてV.レフスキ,L.カラベロフ,H.ボテフ,I.バゾフ,スラベイコフ父子らの作品によって具体的な規範が確立したが,正書法・語彙構文にはロシア語の影響が著しい。

 現在のブルガリア語はマケドニア語とともに名詞類の格変化がなく,その統語的機能は英語などのように語順および前置詞その他による分析的手段によって示される。また,後置限定詞の発達,人称代名詞斜格短縮形の多用,動詞不定形の消失,複雑な動詞変化組織など,隣接するバルカン諸言語ないし南スラブ諸言語にのみ共通する特異性を多く示している。西部方言および東北東南のふたつの東部方言を区別するが,相互の差は比較的小さい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルガリア語」の意味・わかりやすい解説

ブルガリア語
ぶるがりあご
Bulgarian

ブルガリア共和国の言語。スラブ語派の南スラブ語群に属する。言語人口は約800万。文章語は1000年を超える長い伝統をもち、その最古層は、10~11世紀にブルガリアにおいて写本が作成された古代教会スラブ語と一致する。12世紀の文献にはすでにブルガリア語の言語体系における重大な変化(分析的言語への傾向)が反映されており、12~16世紀の中世ブルガリア文語は古代教会スラブ語と区別される。17~18世紀には古い文語の伝統を離脱し、生きた民衆語やトルコ語法を取り入れた新しい文章語が形成された。近代的な文章語の規範は19世紀の初頭に探求され、ブルガリア北東方言を基盤にしてロシア文語を手本とした現代ブルガリア標準文語は19世紀後半にその基礎が確立された。主要な言語的特徴は(1)名詞・形容詞の格変化形が消失し、格の関係が前置詞で表現されること、(2)後置冠詞によって名詞が限定されること(книга та「本」、език ът「言語」)、(3)動詞不定形の消失、(4)古い過去時制の保持――アオリスト(четох「私は読んだ」)、未完了(четах「私は読んでいた」)、完了(чел съм「私は読んでしまった」)、(5)スラブ祖語の*tj、*djがщ、ждとなること、(6)スラブ祖語の鼻母音*がъとなること、などである。

[栗原成郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルガリア語」の意味・わかりやすい解説

ブルガリア語
ブルガリアご
Bulgarian language

ブルガリアの国語。本国以外にもギリシア,ルーマニア,ウクライナなどに話し手がおり,話し手の総数は 800万人をこえる。スラブ語派に属し,セルボ=クロアチア語,スロベニア語,マケドニア語とともに南スラブ語群をなす。格による曲用がほとんど失われていること,後置定冠詞をもつことなどが文法上の特色。古期教会スラブ語が古期ブルガリア語と呼ばれることがあるが,現代のブルガリア語がその直接の子孫かどうかは疑問。語彙には,歴史を反映して,トルコ語からの借用がみられる。キリル文字を使用。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ブルガリア語」の意味・わかりやすい解説

ブルガリア語【ブルガリアご】

インド・ヨーロッパ語族の南スラブ語(スラブ語派)に属する言語。スラブ語中最も古い古代教会スラブ語による文献は10世紀から11世紀にブルガリア地方で書かれた。長くオスマン帝国領であったため,キリル文字(ロシア文字)による現代文語は19世紀後半に確立した。後置冠詞や名詞の格変化の消失など,いわゆるバルカン的特徴をもつ。マケドニア語ときわめて近い。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のブルガリア語の言及

【マケドニア語】より

…マケドニア共和国の公用語で,スラブ語派の南スラブ諸語に属し,系統上はブルガリア語に最も近い。マケドニア人は共和国の総人口の66%余の約129万(1994)を占めるが,ほかに隣接するブルガリア西部とギリシア北部に合わせて30万以上のマケドニア語人口の存在が推定される。…

※「ブルガリア語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android