翻訳|Bulgarian
ブルガリア共和国の基本住民であるブルガリア人の言語。母語とする人口は国内に約775万人(1978)で,これは総人口の約88%にあたる。また,ほかに旧ソ連を主とする国外に約50万人程度のブルガリア系住民が推計されている。ブルガリア語はインド・ヨーロッパ語族のスラブ語派に属し,マケドニア語とともに南スラブ語の東方分枝をなすが,南スラブ語としてセルビア・クロアチア語,スロベニア語とも著しい親縁関係を示している。スラブ語派中最古の10世紀にさかのぼる文献を有するが,10~11世紀の古ブルガリア語Old Bulgarianはいわゆる古教会スラブ語(古代教会スラブ語)資料の中心をなし,当時の各地の正教徒スラブ人の共通の文語としての役割を果たした。現代ブルガリア語は,19世紀後半から20世紀初頭にかけてV.レフスキ,L.カラベロフ,H.ボテフ,I.バゾフ,スラベイコフ父子らの作品によって具体的な規範が確立したが,正書法・語彙・構文にはロシア語の影響が著しい。
現在のブルガリア語はマケドニア語とともに名詞類の格変化がなく,その統語的機能は英語などのように語順および前置詞その他による分析的手段によって示される。また,後置限定詞の発達,人称代名詞斜格短縮形の多用,動詞不定形の消失,複雑な動詞変化組織など,隣接するバルカン諸言語ないし南スラブ諸言語にのみ共通する特異性を多く示している。西部方言および東北・東南のふたつの東部方言を区別するが,相互の差は比較的小さい。
執筆者:佐藤 純一
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ブルガリア共和国の言語。スラブ語派の南スラブ語群に属する。言語人口は約800万。文章語は1000年を超える長い伝統をもち、その最古層は、10~11世紀にブルガリアにおいて写本が作成された古代教会スラブ語と一致する。12世紀の文献にはすでにブルガリア語の言語体系における重大な変化(分析的言語への傾向)が反映されており、12~16世紀の中世ブルガリア文語は古代教会スラブ語と区別される。17~18世紀には古い文語の伝統を離脱し、生きた民衆語やトルコ語法を取り入れた新しい文章語が形成された。近代的な文章語の規範は19世紀の初頭に探求され、ブルガリア北東方言を基盤にしてロシア文語を手本とした現代ブルガリア標準文語は19世紀後半にその基礎が確立された。主要な言語的特徴は(1)名詞・形容詞の格変化形が消失し、格の関係が前置詞で表現されること、(2)後置冠詞によって名詞が限定されること(книга та「本」、език ът「言語」)、(3)動詞不定形の消失、(4)古い過去時制の保持――アオリスト(четох「私は読んだ」)、未完了(четах「私は読んでいた」)、完了(чел съм「私は読んでしまった」)、(5)スラブ祖語の*tj、*djがщ、ждとなること、(6)スラブ祖語の鼻母音*がъとなること、などである。
[栗原成郎]
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…マケドニア共和国の公用語で,スラブ語派の南スラブ諸語に属し,系統上はブルガリア語に最も近い。マケドニア人は共和国の総人口の66%余の約129万(1994)を占めるが,ほかに隣接するブルガリア西部とギリシア北部に合わせて30万以上のマケドニア語人口の存在が推定される。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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