ブルー水素(読み)ぶるーすいそ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルー水素」の意味・わかりやすい解説

ブルー水素
ぶるーすいそ

天然ガスなどの化石燃料原料としてつくられる水素。化石燃料から蒸気メタン改質法などによって水素を製造する際、同時に発生する二酸化炭素(CO2)を回収し、漏出がない地層などに貯留あるいはCO2として利用することにより大気中への放出を防ぐことで、実質的にCO2フリー(排出ゼロ)で製造できる。世界が気候変動対策を強化して温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを目ざす動きが進むなか、CO2フリーの水素はきわめて重要な役割を果たすことが期待されている。水素を使ったゼロ・エミッション発電も重要であるが、産業用・民生用・交通用などの排出ゼロ化がとくにむずかしい分野で、CO2フリー水素を導入することが切り札になると期待されているからである。CO2フリー水素には、再生可能エネルギー由来のグリーン水素や、ブルー水素など多様な種類があるが、なかでもブルー水素は、豊富に存在する化石燃料を利用することで、グリーン水素に比べて現時点ではコスト優位性をもつとされている。そのため、まず水素社会形成にはブルー水素が重要な役割を果たすと期待されている。ブルー水素やその前の段階での導入としてブルーアンモニアなどについては、資源国と消費国が協力して国際的な供給チェーンを構築する動きが顕在化している。消費国のなかでは日本が主導的な役割を果たし、日本政府の支援のもと、多くの日本企業がさまざまな計画・プロジェクトに参加している。サウジアラビアでのブルーアンモニア計画、アラブ首長国連邦でのブルー水素計画、オーストラリアでの褐炭を使ったブルー水素計画、ロシアとのブルー水素・アンモニア計画など、日本と資源国が協力を進める案件は多く、世界の注目を集めている。ブルー水素は、輸送のためマイナス253℃に冷却して液化し、専用の設備やタンカーが必要になるなど導入コストが高く、今後の技術進歩でコスト削減を図ることが必須(ひっす)である。また、関連するインフラの整備を進め、水素の用途を拡大することも今後の重要課題となっている。

小山 堅 2022年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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