日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブレスト」の意味・わかりやすい解説
ブレスト(ベラルーシ)
ぶれすと
Брест/Brest
ベラルーシ(白ロシア)共和国ブレスト州の州都。ブク川に合流するムハベツ川右岸の隆起した平地に発達した。ポーランド国境に近く、ポーランド側の都市テレスポールと対峙(たいじ)する。人口29万9200(1998)、34万7576(2018推計)。鉄道・道路交通上の要地で河港もあり、軍事上も重要である。第一次世界大戦の対独講和のブレスト・リトフスク条約(1918)締結地として有名。古いスラブ人集落で、1044年から12世紀中葉までキエフ大公国に属したが、その戦略的位置のため1319年リトアニア領となり、その名をとって1939年までブレスト・リトフスクБрест‐Литовск/Brest-Litovskとよばれた。16世紀にポーランド領となるが、1795年以降ロシア領、1919~1939年ふたたびポーランド領。食品工業(食肉、乳製品、製粉、製パン)や家具、縫製の軽工業に加えて、精密機械、照明器具、測定機器などが生産されている。
[山本 茂]
ブレスト(フランス)
ぶれすと
Brest
フランス西部、フィニステール県の港湾都市。人口14万9634(1999)、13万9163(2015センサス)。ブルターニュ半島の先端部、ブレスト湾に面する。ローマ時代からの港で、1342~97年イギリスが占領。ブルターニュ公国の帰趨(きすう)に伴って1532年フランス王領となる。17世紀に軍港となり、J・B・コルベールによって整備され、ボーバンが要塞(ようさい)化した。現在、大西洋岸ではフランス最大の軍港となり、海軍工廠(こうしょう)、兵学校が置かれている。商港としても重要で、イギリスとの貿易が盛ん。後背地が狭く、大都市から隔たっているため工業化が遅れてきた。しかし、鉄道、道路網、空港を整備することにより、火力発電所や電気機械(とくにレーダー、通信機械)、造船、化学、既製服製造などの工業が発達した。大学、ブルターニュ海洋研究所、国立海洋開発研究所が立地するなど、1960~1970年代、人口増加が著しく、とくに周辺の農村部から人口が流入した。第二次世界大戦中、ドイツ軍の潜水艦基地となったため連合国軍の猛爆撃を受け、甚大な被害を受けた。美術館は再建され、17~19世紀絵画のコレクションがある。
[高橋伸夫]