改訂新版 世界大百科事典 「プラアパイマニー」の意味・わかりやすい解説
プラアパイマニー
Phra Aphaimani
タイ最高の詩人スントーンプー(1785-1855)の大長編ロマン。絢爛華麗な独特の押韻法をもつ八言クローン形式で,古典史上,個人作品では最大の64章からなる。完成年は不明。平易な市井の語彙を駆使して文学を大衆化した功績はきわめて大きい。弟とともに修業の旅に出たプラアパイマニー王子が魔笛の術を学び,諸国を遍歴して奇想天外な経験が展開される。ヨーロッパ勢力東漸の時代にあって,著者は外国の知識を耳学問で広く吸収し,空想を東南アジアからインド,ヨーロッパにはせ,巨大なスケールで物語を発展させ,戦争,恋愛,教訓,人情の機微を流麗な筆致で描いた。本作品から当時のタイの文物をかなり広く知ることもできる。《千夜一夜物語》や中国歴史小説の影響が若干みられる。
執筆者:冨田 竹二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報