捨身(読み)ステミ

デジタル大辞泉 「捨身」の意味・読み・例文・類語

すて‐み【捨(て)身】

命を捨てる覚悟で、事に当たること。「捨て身戦法」「捨て身強敵に立ち向かう」
[類語]命懸け必死死に物狂い懸命大わらわ躍起決死不惜身命ふしゃくしんみょう大車輪八面六臂一所懸命一生懸命全力総力死力渾身入魂全身全霊

しゃ‐しん【捨身】

供養衆生しゅじょう救済などのために、自分の身を捨てること。「捨身成道じょうどう
修行または供養のため、俗界欲望を捨てて仏門に入ること。出家

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精選版 日本国語大辞典 「捨身」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐しん【捨身】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 俗世の身を捨てて、仏門にはいること。出家。
    1. [初出の実例]「流年十七歳にしてしゃしんし給ふなり」(出典:仮名草子・心友記(1643)上)
  3. 身命をすてて仏などに供養すること。また、自らの身肉を衆生に施すこと。焼身、亡身などともいう。
    1. [初出の実例]「今云、捨命・捨身皆是死也」(出典:勝鬘経義疏(611)摂受正法章)
    2. 「多身の衆生を抉けんが為めに、我が一身をなげすつるを捨身とも云ふ」(出典:ますほのすすき(1816頃))
  4. 自分で自分の生命を断つこと。
    1. [初出の実例]「後の岩岸より飛落て捨身(シャシン)し」(出典:地蔵菩薩霊験記(16C後)七)

すて‐み【捨身】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 身を捨てて事に当たること。身を投げうつ覚悟で全力をつくして事に当たること。また、そのようなさま。
    1. [初出の実例]「私の流儀は仕事をするにも朋友に交はるにも、最初から棄身(ステミ)になって取て掛り」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉老余の半生)
  3. ( 形動 ) 身を捨てること。自暴自棄であること。また、そのさま。なげやり。やけっぱち。
    1. [初出の実例]「実際のことはなるやうにしかならぬといふやうな捨身なところは、其時から出来たやうに勤には思はれる」(出典:妻(1908‐09)〈田山花袋〉二二)
  4. すてみわざ(捨身技)」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「捨身」の意味・わかりやすい解説

捨身 (しゃしん)

仏教で,身を捨てて他の生物を救い,仏に供養する布施行の一つ。捨身の方法は焚身,入水(経典に証例なく,日本にとくに多い),投身,断食,頸縊,自害などがあった。薬王菩薩の焼身(《法華経》),薩埵(さつた)太子の捨身飼虎(《金光明経》),雪山(せつせん)童子の捨身羅刹(らせつ)(北本《涅槃経》)は著名。月兎はウサギの焚身であることが《今昔物語集》にみえている。捨身行は日本では奈良時代に僧尼令で禁じていたが10世紀末から盛んになった。日本では各種の往生伝に往生浄土行として実例が示されている。捨身往生の場としては京都の阿弥陀峰,鳥辺野,船岡山,鴨川や桂川,四天王寺や熊野の海(補陀落(ふだらく)渡海とも関連)が著名である。しかし,13世紀ころから捨身往生は外道視されはじめ,念仏往生が往生正因と考えられるようになる。一方,代受苦行としての捨身は修験の世界に残り,1884年林実利(じつかが)行者は熊野那智大滝から大峰修験道復興を祈念し投身した。

 中国でも南朝以後これを実践する僧侶があらわれたが,在家の信者のあいだでは一時的に世俗の地位を捨てて三宝(さんぼう)の奴(やつこ)となることを捨身とよび,その身をうけだすことを名目として財物が寺院に寄進された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「捨身」の意味・わかりやすい解説

捨身
しゃしん

仏や仏の教えに対して身体をなげうって供養(くよう)したり、他の生き物を救うために自己の身を布施(ふせ)する修行。亡身(もうじん)、焼身(しょうしん)ともいう。仏教では、捨身は菩薩(ぼさつ)修行中のもっとも困難なものとされ、禁じられている自殺と厳密に区別されている。経典のなかではジャータカ(仏の本生譚(ほんじょうたん))として説かれていることが多い。たとえば『賢愚経(けんぐきょう)』などにみえる、鳩(はと)の命を救うためにわが身の肉を切り与えた尸毘王(しびおう)の物語や、大乗の『涅槃経(ねはんぎょう)』中の、帝釈(たいしゃく)の化身(けしん)である鬼が唱えた「諸行無常(しょぎょうむじょう)、是生滅法(ぜしょうめっぽう)」の後半の句を知るために、その鬼にわが身を与えた捨身羅刹(しゃしんらせつ)の物語などである。『金光明経(こんこうみょうきょう)』には薩埵(さった)太子が飢えたトラに身を投げ出して無上の涅槃を求めた捨身飼虎(しゃしんしこ)の話が、『法華経(ほけきょう)』には薬王(やくおう)菩薩が仏や舎利(しゃり)に対して自らの身体を焼いて供養した焼身供養が説かれているが、中国では法華(ほっけ)信仰の隆盛とともにこれにちなんで実際に焼身の例がみられた。また、わが国でも鎌倉時代に浄土信仰が盛んになると、焼身や入水(じゅすい)などが行われるに至った。

[藤井教公]

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普及版 字通 「捨身」の読み・字形・画数・意味

【捨身】しやしん

身を捨てて供養する。また、俗界を棄てる。〔梁書、武帝紀下〕(大通元年)三辛未、輿駕(よが)、同泰寺に幸して身す。甲戌、宮にり、天下に赦し、改元す。~林邑・師子國、各はし、方物を獻ず。

字通「捨」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「捨身」の意味・わかりやすい解説

捨身
しゃしん

命を捨てること。仏教では一般の人々の自殺は厳禁されるが,特に大乗の修行者が他の人あるいは生き物を救うためにみずからの生命をなげうつことは,重要なものとして評価された。ジャータカのなかの捨身飼虎の話は有名である。また,自身を寺に寄付して仏教への献身的な信仰を表明する中国で行われた習慣をもいう。

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