日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクロペンタジエン」の意味・わかりやすい解説
シクロペンタジエン
しくろぺんたじえん
cyclopentadiene
環状ジエンの一つ。常温で無色の液体。独特の臭気をもつ。石炭乾留のガス軽油中に、またナフサ熱分解のC5留分中に含まれ、分留して得られる。工業的に多量生産されている炭化水素で、安価な工業原料である。反応性に富み、室温貯蔵中に2個の分子がディールス‐アルダー反応(ジエン合成)をおこし二量化してジシクロペンタジエンになる。二量体は無色の結晶(融点34℃)で、150℃以上に加熱すると、ふたたびシクロペンタジエンに分解する。通常、二量体で市販されるので、実験室では加熱分解して使用する( )。
シクロペンタジエンは1,3-共役ジエンなので各種の親ジエン剤とディールス‐アルダー反応を行う。反応性に富んだジエン剤として用いられるほか、工業的に農薬、殺虫剤、各種樹脂可塑剤の合成に使われる。塩基の作用で水素イオンが引き抜かれ、6個のπ(パイ)電子をもった平面構造を有するシクロペンタジエニル・アニオンを与える。これは芳香族性を有する代表的なアニオン種である。
[向井利夫]
シクロペンタジエン(データノート)
しくろぺんたじえんでーたのーと
分子式 | C5H6 |
分子量 | 66.1 |
融点 | -85℃ |
沸点 | 38~39℃/737mmHg |
比重 | 1.80475(測定温度19℃) |
屈折率 | (n)1.444 |