改訂新版 世界大百科事典 「ヘクソカズラ」の意味・わかりやすい解説
ヘクソカズラ
Paederia scandens (Lour.) Merr.
山野に多いアカネ科の多年生つる草であるが,茎の下部は枯れないで残り,木化して直径1cmほどとなり木本状となる。植物体に悪臭があるので,この名がつけられた。一名サオトメバナ(早乙女花)。茎は長く伸び,葉は卵心形から狭卵形。夏,葉腋(ようえき)から出た枝に多数の花をつける。花冠は筒状,先は5裂し,白いが内側は赤紫色。花冠につばをつけ,人の体にくっつけて遊び,そのようすがもぐさに似るため,ヤイトバナともいう。子房は下位,2室で,各室に直生する1個の胚珠がある。果実は球形で黄褐色に熟し,直径5mm。中国では全草が薬用にされる。また近縁のインドヤイトバナP.foetid L.の若葉は食用にされることがある。日本全土,中国,東南アジアに広く分布し,変異が多い。ハマサオトメカズラvar.maritima(Koidz.)Haraは海岸にはえ,葉が厚く,光沢があって,毛がない。
執筆者:福岡 誠行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報