日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘクソカズラ」の意味・わかりやすい解説
ヘクソカズラ
へくそかずら / 屁糞葛
[学] Paederia foetida L.
Paederia scandens (Lour.) Merr.
アカネ科(APG分類:アカネ科)の藤本(とうほん)(つる植物)。ヤイトバナ(灸花)、サオトメバナ(早乙女花)ともいう。乾くと全草黒っぽくなる。地面をはって長く伸びる茎には花はつかない。花のつく茎は、他物に巻き付いて高く上る。枯れないで残った茎は木質化して肥大成長し、径1センチメートルになる。葉は対生し、卵形。7~9月、枝先や葉腋(ようえき)に集散花序をつくり、多数の花を開く。花冠は筒形で5裂し、外側は灰白色、内側は赤紫色。果実は球形、先に小さくとがった萼片(がくへん)が残り、種子は2個。日本、および中国南部、インド、東南アジアに広く分布する。植物体をもむと悪臭があるので屁糞葛の名があり、花冠内側の赤紫色が灸(きゅう)をすえた跡に似るので灸花の名がある。早乙女(さおとめ)花は、花序を早乙女が用いるかんざしに見立てたものと思われる。花冠に唾液(だえき)をつけ、顔などにくっつけて草花遊びに用いられる。靭皮(じんぴ)繊維が長く、茎は紐(ひも)の代用となり、中国では茎を咳(せき)どめの薬としたり、紙の原料とする。
ヘクソカズラ属は熱帯を中心に約30種分布する。
[福岡誠行 2021年5月21日]