改訂新版 世界大百科事典 「ヘリック」の意味・わかりやすい解説
ヘリック
Robert Herrick
生没年:1591-1674
イギリスの詩人。ロンドンに生まれ,少年時代は叔父の金銀細工の店で徒弟として働いた。ケンブリッジ大学卒業後ロンドンにもどり,〈ベン一家〉と呼ばれたベン・ジョンソンの文学サークルで,一番弟子の位置を占めた。思想的には王党派・国教会右派,文学的には古典文学とくにホラティウスを中心とするラテン詩の平衡と洗練を旨とした。1629年からデボンシャーで牧師。内乱に際して47年にピューリタンに追われたが,62年に復職。静かな田舎牧師の生活の合間に詩作を続けたが,自然の四季のめぐりに対するこまやかな愛情をこめた抒情詩,そしてジュリア,コリンナ,アンシア等の古典詩からの名前で呼ばれる美しい娘たちにささげる恋愛詩が多い。神も,酒も,花も,乙女らも,みずみずしい情感で歌った短詩約1250編は,《聖歌集》(1647),《ヘスペリディーズ》(1648)の2詩集を合わせた1巻に盛られ,詩の愛好家を魅了し続けている。
執筆者:川崎 寿彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報