ヘリック(その他表記)Robert Herrick

改訂新版 世界大百科事典 「ヘリック」の意味・わかりやすい解説

ヘリック
Robert Herrick
生没年:1591-1674

イギリス詩人ロンドンに生まれ,少年時代は叔父の金銀細工の店で徒弟として働いた。ケンブリッジ大学卒業後ロンドンにもどり,〈ベン一家〉と呼ばれたベン・ジョンソンの文学サークルで,一番弟子の位置を占めた。思想的には王党派・国教会右派,文学的には古典文学とくにホラティウスを中心とするラテン詩の平衡と洗練を旨とした。1629年からデボンシャー牧師。内乱に際して47年にピューリタンに追われたが,62年に復職。静かな田舎牧師の生活の合間に詩作を続けたが,自然の四季のめぐりに対するこまやかな愛情をこめた抒情詩,そしてジュリア,コリンナ,アンシア等の古典詩からの名前で呼ばれる美しい娘たちにささげる恋愛詩が多い。神も,酒も,花も,乙女らも,みずみずしい情感で歌った短詩約1250編は,《聖歌集》(1647),《ヘスペリディーズ》(1648)の2詩集を合わせた1巻に盛られ,詩の愛好家を魅了し続けている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘリック」の意味・わかりやすい解説

ヘリック
Herrick, Robert

[生]1868.4.26. マサチューセッツケンブリッジ
[没]1938.12.23. バージン諸島,シャーロットアマーリア
アメリカ小説家。ハーバード大学卒業 (1890) 。シカゴ大学英文学を講じる (93~1923) かたわら,シカゴを舞台に商業主義産業主義に毒された現代社会をテーマにした多くの小説を発表。代表作『宿の主』 The Master of the Inn (08) のほか,『大衆』 The Common Lot (04) ,『あるアメリカ市民の回想』 The Memoirs of an American Citizen (05) ,『ある女の一生』 One Woman's Life (13) 。

ヘリック
Herrick, Myron Timothy

[生]1854.10.9. オハイオ,ハンティントン
[没]1929.3.31. パリ
アメリカの弁護士,銀行家,外交官。オハイオ・ウェズレイアン大学卒業。 1878年弁護士になり,銀行業や実業方面でも活躍。 86~94年ソサエティ・フォーセービングで会計係をつとめ,のちに同銀行の頭取,会長となった。 1901年アメリカ銀行協会会長,03~06年オハイオ州行政長官をつとめ,12~14年フランス駐在大使となり,第1次世界大戦勃発当初の戦争犠牲者救済活動に尽力。戦後も 21~29年再度フランス駐在大使をつとめた。

ヘリック
Herrick, Robert

[生]1591.8.24. 〈洗礼〉ロンドン
[没]1674.10. デボンシャー
イギリスの詩人,聖職者。ケンブリッジ大学を出て牧師となったが,王党派であったため共和政府によって職を奪われた。王政復古によって復職。 B.ジョンソンの系譜に連なる「王党派詩人」の第一人者で牧歌的背景のなかで女性への愛を歌った。『ヘスペリデス』 Hesperides (1648) が代表的詩集。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘリック」の意味・わかりやすい解説

ヘリック(Robert Herrick(1868―1938))
へりっく
Robert Herrick
(1868―1938)

アメリカの小説家。ハーバード大学卒業後、約30年間シカゴ大学で英文学を講じる。新興産業都市シカゴの物質的繁栄と道徳的退廃、とくに商業主義に毒されていく市民たちを写実的に描く『共通の運命』(1904)がよく知られている。だがこの東部出身の頭脳は、現実描写のみに満足せず、個人の自由と道徳性を重視する理想主義を掲げる。瞑想(めいそう)と労働によって自己救済を図る『宿屋の主人』(1908)はその作品例である。

[岩瀬悉有]


ヘリック(Robert Herrick(1591―1674))
へりっく
Robert Herrick
(1591―1674)

ベン・ジョンソンの流れをくむイギリスの詩人。J・ダンの骨太な形而上(けいじじょう)詩風と対照的に、きわめて優雅、繊細なエリザベス朝風を特色とし、素朴なスタイルを支えるみごとな技巧は見逃せない。地方の一牧師として平穏な日々を送りながら、ローマ古典の風土とイギリスの田園を融合し、恋を歌い、「小川と花と小鳥と樹陰」を歌った。詩集『ヘスペリデス』(1648)が代表作。

[河村錠一郎]

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百科事典マイペディア 「ヘリック」の意味・わかりやすい解説

ヘリック

英国の詩人。B.ジョンソンのサークルに属した王党派抒情詩人の一人。《ヘスペリディーズ》(1648年)には,恋や花を歌った繊細な珠玉の小詩が含まれている。〈カルペディエム(現在をつかめ)〉という主題を扱った《色あせぬうちにバラのつぼみをつめ》などの小唄が有名。

ヘリック

米国の作家。シカゴ大学で英文学を教えながら,《勝利する男》(1897年),《共有地》(1904年),《宿屋の主人》等,同時代の米国社会を批判する作品を書いた。

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