改訂新版 世界大百科事典 「ヘーマチャンドラ」の意味・わかりやすい解説
ヘーマチャンドラ
Hemacandra
生没年:1089-1172
インドのジャイナ教白衣(びやくえ)派の学匠。ダンドゥカ(グジャラート州アフマダーバード近郊)の生れ。デーバチャンドラの弟子。チャールキヤ朝ジャヤシンハ・シッダラージャ王およびその後継者クマーラパーラ王の庇護を得て,きわめて多才な文筆活動を行った。サンスクリットやプラークリット(俗語)の文典および辞書,詩学と音韻学の入門書,哲学論書など,広い分野にわたってすぐれた学術書を著した。一方,開祖マハービーラをたたえる詩集《ビータラーガ・ストートラ》や,長編の叙事詩《トリシャシュティシャラーカープルシャ・チャリタ(63偉人伝)》10巻とその補遺《パリシシュタパルバン》を書いて,詩人としても令名をはせた。ヘーマチャンドラはインド文学史上に不朽の名をとどめるが,またジャイナ教教団史の上でもきわめて重要な位置を占め,中世以降の西インドにおける同教の隆盛も,彼なくしてはほとんど考えられないとまでいわれる。
執筆者:矢島 道彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報