ベッサラビア(読み)べっさらびあ(英語表記)Bessarabia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベッサラビア」の意味・わかりやすい解説

ベッサラビア
Bessarabia

東ヨーロッパの歴史的地域名。ドネストル川プルト川の間に位置する豊かな農業地帯。コムギ,トウモロコシ,テンサイ,タバコ,ブドウなどを産し,ウシ放牧も盛ん。今日,大部分モルドバに,一部分ウクライナに属する。住民の大半はモルドバ人で,その他ウクライナ人,ロシア人,ユダヤ人が居住。中心都市キシナウ。6世紀頃にスラブ人が来住し,その後も諸民族の往来が盛んで,13世紀にはモンゴルが侵入。14世紀末からモルドバ,ワラキア諸侯の支配を受けた。ベッサラビアの名称は,このときワラキアを支配していたバサラブ朝に由来するといわれる。16世紀以降オスマン帝国の支配を受けたが,18世紀頃からロシアが進出,1812年ブカレスト条約で全域がロシア領となった。1856年パリ条約によって南部地域はモルドバに割譲されたが,1878年ベルリン会議を経て再びロシアに帰属。ロシア革命に際して,この地の労働者・農民評議会はモルドバ共和国を宣言,1918年ルーマニア帰属を決定,1920年パリ条約によって承認された。しかしソビエト連邦はあくまで承認を拒否,1940年ベッサラビア返還を強行した。1941年ルーマニアはドイツ支援を得て一時この地を回復したが,1944年ソ連軍が奪回,1947年パリ平和条約でソ連帰属が承認され,モルダビア=ソビエト社会主義共和国となった。1980年代後半のペレストロイカならびに東欧革命なかで 1990年6月国名をモルダビア共和国として主権宣言,翌 1991年8月国名をモルドバ共和国と改称した。(→ルーマニア史ロシア史

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベッサラビア」の意味・わかりやすい解説

ベッサラビア
べっさらびあ
Bessarabia

ヨーロッパ東部、ともに黒海に注ぐドニエストル川プルート川に挟まれた歴史的地域。面積約4万5000平方キロメートル。ルーマニア語名バサラビアBasarabia。「ベッサラビア」は英語名。モルドバ共和国の大部分を占めるが、歴史的な係争地域で、住民の3分の2弱がルーマニア人(旧ソ連では独自の「モルダビア人」だとしていた)、残りはウクライナ人、ロシア人などである。中心都市キシニョフ。14世紀にルーマニア人が建国したモルダビア公国の一部となったが、16世紀にはモルダビアとともにオスマン・トルコの宗主権下に入った。トルコは1812年のブカレスト条約によってベッサラビアをロシアに割譲。1917年のロシア革命後、同地は混乱に陥ったが、18年4月に同地のルーマニア人の評議会(スファト)は、進攻してきたルーマニア軍を背景にルーマニアとの合併を決議した。ソ連はそれに強く抗議し、39年の独ソ不可侵条約でドイツの了解を得たうえで40年6月に最後通牒(つうちょう)を発し、ルーマニアから同地を奪還。第二次世界大戦時に枢軸側にたったルーマニアが同地を奪ったが、戦争末期にソ連が回復した。1960年代に入って、歴史論争の形でベッサラビアをめぐる両国の抗争が再燃した。

[木戸 蓊]

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