日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルカント」の意味・わかりやすい解説
ベルカント
べるかんと
bel canto イタリア語
西洋音楽の歌唱法の一つ。「美しい歌」を意味するイタリア語から派生し、美しく歌い上げることを目的とする。その唱法は、劇的な表現よりもむしろ美しい声や華麗な技巧を強調し、18世紀から19世紀前半にかけてのイタリア・オペラ(たとえばベッリーニやロッシーニのオペラなど)で広く愛好された。さらに、同時代のイタリアの歌曲やイタリア様式で作曲されたモーツァルトのいくつかのオペラなども、通常この唱法で歌われる。しかし、19世紀の後半には、オペラのオーケストラ伴奏が大規模になり、題材も劇的なものが取り上げられるようになったため、ベルカント唱法は重厚な劇的歌唱法にとってかわられた。
[黒坂俊昭]
『コーネリアス・L・リード著、渡部東吾訳『ベルカント唱法――その原理と実践』(1986・音楽之友社)』