ペーリ(英語表記)Jacopo Peri

改訂新版 世界大百科事典 「ペーリ」の意味・わかりやすい解説

ペーリ
Jacopo Peri
生没年:1561-1633

イタリアの作曲家,歌手。反宗教改革時代のローマに生まれる。当時のローマでは,P.パレストリーナを中心とするローマ楽派が,中世から続いてきたポリフォニー様式を踏襲しつつ音楽を通じてカトリック信仰を表明することに専念していた。したがってペーリにとっては,青年時代にこのローマを去り,前衛的な芸術運動の一つの中心地フィレンツェに移り住んだことが,音楽家としての将来を決定する契機となった。1590年ころからメディチ家の歌手となり,コジモ2世治世(1609-21)に宮廷音楽監督の地位を得る。フィレンツェでは1580年代末からメディチ家に仕える貴族バルディ伯とコルシ伯)をパトロンとして,詩人,音楽家,理論家たちが〈カメラータcamerata〉と称するアカデミーを結成し,古代ギリシア悲劇の朗唱法の復活を目ざして研究をつづけていたが,ペーリは90年代半ばからこのカメラータの一員となり,詩人リヌッチーニOttavio Rinuccini(1562-1621)の協力を得て,音楽的物語《ダフネDafne》(1598初演)と《エウリディーチェEuridice》(1600年メディチ家の婚礼余興として初演)を完成する。この2作品は,カメラータの会員たちの理論的研究の成果である〈舞台様式stile rappresentativo〉を実践したもので,今日,レチタティーボを用いた近代的なオペラの誕生を意味する作品と見なされている。なおペーリのオペラ創作の仕事は,数年後クラウディオ・モンテベルディに継承される。
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百科事典マイペディア 「ペーリ」の意味・わかりやすい解説

ペーリ

イタリアの作曲家,歌手。現存する最古オペラの作曲者。ローマに生まれ,フィレンツェでメディチ家の歌手となる。同家に仕えるバルディ伯らをパトロンとして結成された〈カメラータ〉に加わり,詩人O.リヌッチーニ〔1562-1621〕と組んで《ダフネ》(1598年)と《エウリディーチェ》(1600年)を完成(前者の楽譜は散逸)。レチタティーボを用いた近代的なオペラの礎を築いた。この成果はベネチアのモンテベルディに引き継がれてより完成度を高め,17世紀末のナポリへ,さらにフランス,イギリスへとオペラは普及する。
→関連項目カッチーニ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペーリ」の意味・わかりやすい解説

ペーリ
ぺーり
Jacopo Peri
(1561―1633)

イタリアの作曲家、歌手、器楽奏者。現存する最古のオペラ『エウリディーチェ』(1600)の作曲者。8月20日ローマに生まれたが、フィレンツェの貴族の家柄のため、幼くして同市に移った。マルベッツィに師事し、1579年バディア教会オルガン奏者となる。80年代にバルディ邸に集う芸術家集団「カメラータ」の一員となり、88年以降、メディチ家の宮廷に仕え、盛んな活動を展開した。バルディのローマ行きに伴い、カメラータたちは92年以来コルシ邸に集い、古代ギリシアの音楽劇の復興を目ざす新しい音楽形式を試みたが、98年の謝肉祭に初演されたのが彼の最初のオペラ『ダフネ』である。『ダフネ』の音楽はほとんどが失われたが、1600年10月6日、マリ・ド・メディシスとフランス王アンリ4世の婚礼にピッティ宮殿で初演された『エウリディーチェ』は、現存する世界最古のオペラとなった。ただし、このとき上演された『エウリディーチェ』は、ペーリに対抗したカッチーニにより曲の一部を書き改められたものであった。なおペーリはメディチ家のほか、マントバのゴンザーガ家のためにも作曲し、同時代者からたぐいまれに優雅な歌唱と演奏をたたえられた。33年8月12日フィレンツェで没。

[樋口隆一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペーリ」の意味・わかりやすい解説

ペーリ
Peri, Jacopo

[生]1561.8.20. ローマ
[没]1633.8.12. フィレンツェ
イタリアの作曲家。 C.マルベッツィに学び,1591年フィレンツェのメディチ家の首席音楽監督となる。初期のオペラ『ダフネ』 (1597) ,『エウリディーチェ』 (1600) の作曲者として知られる。

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