日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペーリ」の意味・わかりやすい解説
ペーリ
ぺーり
Jacopo Peri
(1561―1633)
イタリアの作曲家、歌手、器楽奏者。現存する最古のオペラ『エウリディーチェ』(1600)の作曲者。8月20日ローマに生まれたが、フィレンツェの貴族の家柄のため、幼くして同市に移った。マルベッツィに師事し、1579年バディア教会オルガン奏者となる。80年代にバルディ邸に集う芸術家集団「カメラータ」の一員となり、88年以降、メディチ家の宮廷に仕え、盛んな活動を展開した。バルディのローマ行きに伴い、カメラータたちは92年以来コルシ邸に集い、古代ギリシアの音楽劇の復興を目ざす新しい音楽形式を試みたが、98年の謝肉祭に初演されたのが彼の最初のオペラ『ダフネ』である。『ダフネ』の音楽はほとんどが失われたが、1600年10月6日、マリ・ド・メディシスとフランス王アンリ4世の婚礼にピッティ宮殿で初演された『エウリディーチェ』は、現存する世界最古のオペラとなった。ただし、このとき上演された『エウリディーチェ』は、ペーリに対抗したカッチーニにより曲の一部を書き改められたものであった。なおペーリはメディチ家のほか、マントバのゴンザーガ家のためにも作曲し、同時代者からたぐいまれに優雅な歌唱と演奏をたたえられた。33年8月12日フィレンツェで没。
[樋口隆一]