日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベルナルダン・ド・サン・ピエール
べるなるだんどさんぴえーる
Jacques-Henri Bernardin de Saint-Pierre
(1737―1814)
フランスの博物学者、作家。ル・アーブルの生まれ。技術関係の軍人であったが、軍隊生活と折り合いがつかず退役。その後は、ヨーロッパを放浪、理想の社会を夢想する。1768年マダガスカルへの遠征隊に参加し、フランス島(現在のモーリシャス島)に1770年まで滞在。帰国後、J・J・ルソーと交際。1773年に『フランス島旅行記』を出版。1784年に公刊された『自然の研究』は、その自然描写によって有名となり、その1788年版には、現在なお読まれている『ポールとビルジニー』(1787年発表)が収められる。ほかに『インドの荒屋(あばらや)』La Chaumière indienne(1790)、『自然の調和』(1815)がある。1792年パリ植物園の園長、1795年アカデミー会員。ナポレオン帝政下、名声と栄光のうちに死ぬ。社会への憎悪から生まれた自然への愛が、自然の観察、描写を生み出した。ロマン主義のシャトーブリアンの先駆者でもある。
[原 好男]