ポールとビルジニー(読み)ぽーるとびるじにー(英語表記)Paul et Virginie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポールとビルジニー」の意味・わかりやすい解説

ポールとビルジニー
ぽーるとびるじにー
Paul et Virginie

フランスの作家ベルナルダン・ド・サン・ピエールが『自然の研究』1787年版の最終巻に付け加えた小説ポールとビルジニーは、フランス島(現在のモーリシャス島)で、社会のもたらす悪影響から免れて、貧しいが、けがれなく幸せな状態で育ち、子供のころから愛し合っている。金持ちで厳しい叔母によって教育のためにフランスへよばれたビルジニーは不幸になる。2年後、島へ戻る際、海岸で、ポールの見ているなか、船が難破して死に、ポールも悲しみから死ぬ。自然のなかにしか幸福はなく、社会のなかでは人間は不幸になるばかりという、自然と社会を対立させる考え方には、ルソーの強い影響がみられる。南海の島の自然や嵐(あらし)の描写は、それまでのフランス文学にはなかったもので、出版されると大成功を収め、現在まで読み継がれてきているベルナルダン・ド・サンピエール唯一作品である。

[原 好男

『新庄嘉章訳『ポールとヴィルジニー』(角川文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポールとビルジニー」の意味・わかりやすい解説

ポールとビルジニー
Paul et Virginie

フランスの作家ベルナルダン・ド・サン=ピエールの小説。 1787年『自然の研究』の一部として刊行熱帯のフランス島 (現モーリシャス島) を背景に繰広げられる清新な愛を描いた牧歌的作品で,自然描写にすぐれ,エキゾチスム小説の典型を示した。

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