ケンブリッジ大学の心理学者C.K.オグデンが1930年に発表した一種の国際補助語(国際語)。エスペラントのような,いわゆる〈人為的〉な国際語とはかなり異なり,実際に用いられている英語を母体として,語彙,文法などの面でその複雑さを切りつめ,かつ,英語を母国語とする人ならだれでもすぐに理解できるものであろうとした。〈ベーシック〉とは〈基本的〉の意であるとともに,〈British,American,Scientific,International,Commercial〉の頭文字であると主張される。ベースに英語が選ばれたのは,英語が最も普及した言語で,文法形式も簡単であり,語彙も国際性が高いなどの理由によっている。
基礎となるのはわずか850語で(ほかに少々の国際的用語が加わる),独自の意味理論により,動詞,抽象名詞,感情的色彩の強い形容詞の数を極度に減じている。動詞(助動詞を含む)の数はcome,do,get,haveなど20個のみ(純粋の動詞は10個)で,これを前置詞や名詞などと組み合わせて数千の動詞的概念を代表させる。名詞は600語,形容詞は150語で,-ly,-er,-edなどの付加は別枠とする。一時かなりの勢いを見せたが,たとえば動詞stopをcome to a stop,動詞lose〈負ける〉をgive wayと言い換えるなど,かえって複雑であるとかねて批判されてきた。また今日のすさまじい科学技術用語の増加のもとで,850語ですべてをまかなうのは少々無理と言わざるをえない。ただし聖書のベーシック訳は成功したと言ってよかろう。日本ではF.J.ダニエルズ,高田力らが紹介に努めた。
→国際語
執筆者:三宅 鴻
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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