日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペンジアス」の意味・わかりやすい解説
ペンジアス
ぺんじあす
Arno Allan Penzias
(1933―2024)
アメリカの電波天文学者。ドイツのミュンヘンに生まれる。1940年、ナチス・ドイツを逃れて両親とともにアメリカに渡り、シティ・カレッジ(現、ニューヨーク市立大学)を1954年卒業した。2年間陸軍通信部隊に所属したあと、コロンビア大学で研究助手を務め、1961年ベル研究所に入り、1972年電波物理学部門の研究部長、1976年電波研究所の所長、1979年通信科学担当重役となった。また1972年から1982年までプリンストン大学の客員教授を務めた。
ベル研究所でウィルソンとともに衛星通信の障害となる宇宙電波による雑音の研究に取り組んでいたが、1964年に宇宙のすべての方向からくる一様な波長約7センチメートルのマイクロ波の放射を検出した。この宇宙背景放射Cosmic Microwave Background Radiation(CMB。宇宙マイクロ波背景放射、宇宙黒体放射、3K放射ともいう)は温度が約3K(マイナス270℃)と計算され、これに対してプリンストン大学教授のディッケRobert Henry Dicke(1916―1997)は、宇宙の創生時におきたビッグ・バンの名残(なごり)であると説明した。ペンジアスらの発見は、ビッグ・バン理論を検証するものとして、その後の宇宙論に大きな影響を与えた。この発見に対して、ウィルソンとともに1978年のノーベル物理学賞を与えられた。低温物理学のカピッツァとの同時受賞であった。
[編集部]