スペインの民謡,民俗舞曲。北東部アラゴン地方が本場だといわれ,今日も最も盛んに歌い踊られるのは同地方であるが,またスペイン各地に普及して変型を生んでもいる。とくにナバラ地方のホタ・ナバラ,バレンシア地方のホタ・バレンシアーナなどは,アラゴン地方の〈正調〉(ホタ・アラゴネーサ)に次いでよく知られている。音楽的な構造は,民俗的弦楽器の合奏による快活な前奏のあと歌に入り,そこでは1フレーズごとに長調の主和音と属和音が交代するだけという単純なものである。しかし,その範囲内で節まわしはこまかく微妙である。ホタを演奏するロンダーリャrondallaと呼ばれる合奏団の構成はバンドゥリアbandurria,ラウードlaúd(以上いずれもフラット・マンドリンに似たプレクトラム使用の弦楽器),ギターなどにより,民族衣装をつけた男女の踊り手はカスタネットを用いる。男の踊り手が高くとび上がるのも特徴である。快活であるとともに哀愁と粋な感じを帯びたホタは芸術音楽の作曲家たちにも素材とされ,たとえばM.I.グリンカはスペイン旅行の体験から管弦楽曲《ホタ・アラゴネーサ》(1845)を,M.deファリャは歌曲《ホタ》を書いた。
執筆者:浜田 滋郎
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スペインの民謡と民俗舞踊。北東部のアラゴン地方が本場とされるが、各地に多くのバリアンテ(変種)が存在する。ホタの名称は、この音楽を伝えたアラビアの詩人の名に由来するとの説もあるが、跳躍するという意のsotar(ソタール)に由来するという説が、今日では有力である。
音楽は6/8または3/4拍子で、主和音と属和音とが交替する和声のなかで、旋律がA・B・A・C・D・C・Eと進行し、これに対して歌詞が、a・b・a・c・d・d・aと進行する形を基本とする。舞踊は、民俗衣装を身に着けた男女が活発に踊るもので、とくに男性の高い跳躍が特徴的である。伴奏はロンダリャrondallaとよばれる民俗的合奏団により、リュート、ギター、タンバリン、カスタネットなどを用いて行われる。前奏、間奏、後奏は軽快だが、コプラといわれる独唱の部分では伴奏は控え目になる。
芸術作品としてのホタは、ファリャの『スペインの七つの民謡』の第4曲が有名だが、スペインの作曲家はもとより、ロシアのグリンカやフランスのシャブリエなどの作品にも用いられている。
[アルバレス・ホセ]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…北海道からフィリピンまで分布する。多くの地方でアラ,関西でホタ,中国地方の各地でイカケ,長崎・熊本でスケソウなど地方により多くの呼名がある。体型は細長くスズキ(イラスト)に似るが,体色は背部は茶褐色で腹部は白色である。…
…本州中部以南に分布しているが,伊豆七島などでは漁獲量も多く,水産上重要な種の一つ。伊豆半島でシャカ,高知県柏島でベント,鹿児島県でホタと呼ぶ。鮮やかな青緑色の体に,眼の後方から尾びれに走る鮮やかな黄色縦帯のある美しい魚である。…
…なおスペイン民謡は慣習的におおむね独唱で歌われるが,カタルニャ,バスクでは19世紀から興った民衆的な合唱運動が根づき,今では一つの伝統をなしている。アラゴン地方の名物はホタで,これには歌うため,踊るためと大別して二つの型があるが,いずれにせよ〈涙と笑いを同時に含む〉と表現される独特な趣をもっている。このホタはアラゴン以外の土地にも普及してさまざまな変形を生んでおり,中でもナバラ地方,バレンシア地方のものなどはよく知られる。…
…スペインは,舞踊のさかんなことにかけてはヨーロッパでも指折りの国である。ボレロ,セギディーリャ,ホタ,ファンダンゴ,各種フラメンコ舞踊など世界的に知られる踊りも少なくない。なかでも著名なのはフラメンコだが,これがスペイン舞踊のすべてであるように思うのは誤解で,この国にはより古い歴史をもつ古典舞踊や,それぞれ固有の風土を背景とした多様な民俗舞踊の流れも存在する。…
※「ホタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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