出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
スイスの画家。ベルンの指物師の家に生まれ、5歳で父を、14歳で母を失い、苦学してジュネーブの美術学校に学ぶ。初期にはコローやクールベの影響を受け、職人や手工業者など身近な環境や風景をモチーフとする写実的な手法から出発した。のちしだいに画面に明晰(めいせき)で厳格な秩序を追求し、寓意(ぐうい)画の大作『夜』(1890・ベルン美術館)で注目された。同一の色彩形態の反復を骨子とする彼の「平行の原理」は、個を超えた類型を求める一種の象徴主義といえる。ほかに『夜』と対(つい)をなす『昼』(1900・ベルン美術館)、イエナ大学の壁画『イエナ大学生の行進』(1908)が代表作。写実から象徴へ、装飾から寓意への転換を果たした彼は表現主義の先駆と目される。
[野村太郎]
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