日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホブズボーム」の意味・わかりやすい解説
ホブズボーム
ほぶずぼーむ
Eric John Hobsbawm
(1917―2012)
イギリスのマルクス主義知識人、歴史家。ユダヤ系の両親のもとにエジプトのアレクサンドリアに生まれ、2歳のときウィーンに移り、少年時代を過ごす。父親を亡くして1931年ベルリンへ移り、1933年ロンドンに移住し、グラマー・スクールを経てケンブリッジ大学キングズ・カレッジに入り、1939年学位を得る。
1955年にロンドン大学バークベック・カレッジの歴史学のポストを得て以後、教授を務め、のち退職して名誉教授。研究は多方面にわたり、国際的な影響力をもっている。『イギリス労働史研究』(1964)に代表される労働史の分野の研究、『素朴な反逆者たち』(1959)や『匪賊(ひぞく)の社会史』(1969)にみられるようにおくれた社会に住む人々の民衆運動の研究、『市民革命と産業革命』The Age of Revolution(1962)や『産業と帝国』(1968)などの資本主義の経済史的分析、『革命家たち』(1973)に代表される現代マルクス主義思想や政治への発言など、多数の研究や評論がある。1982年までの著作目録はR. Samuel & G. Stedman Jones: Culture, Ideology and Politics;Essays for Eric Hobsbawm (1982, London)の巻末に付されている。なお、学生時代から1966年ころまで、フランシス・ニュートンの名でジャズ評論も行った。
1982年ロンドン大学退官後は、1984年から1997年までニューヨークの社会研究所(New School for Social Research)を研究活動の場とし、その後も各地で講義や講演を行いながら19世紀と20世紀の世界史の包括的な著作を出した。
[安川悦子]
『鈴木幹久・永井義雄訳『イギリス労働史研究』(1968・ミネルヴァ書房)』▽『斎藤三郎訳『匪賊の社会史』(1972・みすず書房)』▽『斉藤孝・松野妙子訳『革命家たち』(1978・未来社)』▽『斉藤孝・木畑洋一訳『反乱と革命』(1979・未来社)』▽『浜林正夫・神武庸四郎・和田一夫訳『産業と帝国』(1984・未来社)』▽『水田洋他訳『素朴な反逆者たち』(1989・社会思想社)』▽『河合秀和訳『極端な時代――20世紀の歴史』(1996・三省堂)』▽『河合秀和訳『わが20世紀・面白い時代』(2004・三省堂)』