ボウエンギョ(読み)ぼうえんぎょ(その他表記)telescope fishes

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボウエンギョ」の意味・わかりやすい解説

ボウエンギョ
ぼうえんぎょ / 望遠魚
telescope fishes
[学] Gigantura spp.

硬骨魚綱ヒメ目ボウエンギョ科Giganturidaeに属する海水魚の総称、またはそのなかの1種。ボウエンギョ科魚類は、世界中の熱帯から温帯海域に分布する。体は非常に細長く、側扁(そくへん)する。頭は小さい。吻(ふん)は丸く、吻長は眼径より著しく短い。目が大きく、前方に向かって筒状に突出しているので、望遠鏡に見立ててこの名がつけられた。口はきわめて大きく、上顎(じょうがく)は主上顎骨だけからなる(前上顎骨、上主上顎骨はない)。上顎の後端は目のはるか後方に達する。上下両顎に倒すことができる多数の鋭い歯が2~3列に並び、中央列のものは肥大し牙(きば)状になっている。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)、口蓋骨および舌上に歯がない。鰓耙(さいは)と鰓条骨はない(仔魚(しぎょ)にはある)。体には鱗(うろこ)がなく、皮膚は柔らかい。各ひれには棘(きょく)がない。背びれは体の中央部または後半部にある。臀(しり)びれは背びれ基底(付け根の部分)の後端あるいはそれよりもわずかに後方から始まる。胸びれ鰓孔の上端付近にあり、その基底はほとんど水平。胸びれは30~43軟条で、著しく数が多い。尾びれは二叉(にさ)し、下葉の数軟条は長く後方に伸びる。脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)と腹びれを欠く(仔魚にはある)。体色は光沢のある銀色体長は22センチメートルほどになる。きわめてまれにしか採集されないが、その変わった形態のためにかなり有名である。水深500~2000メートルの中深層~漸深層に生息し、日周鉛直移動をしないことが知られている。伸縮できる胃をもっていることから、大形の魚類などを食べることができる。同じ個体が同時に精巣卵巣を成熟させる同時的雌雄同体魚である。

 ボウエンギョ科には、世界からボウエンギョ属の1属にG. chuniG. indicaの2種が知られている。G. chuniは太平洋、インド洋および大西洋の熱帯海域に分布している。日本の海域からは報告されていないが、ボウエンギョの和名が与えられている。他方、G. indicaは沖ノ鳥島北東沖、東シナ海南部など太平洋、インド洋、大西洋の熱帯から亜熱帯海域に分布しているが、和名が与えられていなかった。2008年(平成20)に魚類研究者の福井篤(あつし)らによって九州の南東沖から1個体の成魚と房総(ぼうそう)半島東方沖から3個体の仔魚が日本近海で採集され、これにコガシラボウエンギョの和名がつけられた。

 コガシラボウエンギョは臀びれと胸びれの軟条が多くて、それぞれ11~14本と36~43本(ボウエンギョでは8~10本と30~33本)であること、頭高と尾柄(びへい)高が低くて、それぞれ体長の7.6~8.1%と2.0~3.6%(同13~18%と8~11%)であることなどで、ボウエンギョと区別できる。コガシラボウエンギョの仔魚は体が短く、腹部は膨張して球形である。目は円形で側方を向く。腹びれは腹部にあり、垂直につく。尾びれの下葉は伸長しない。体長25~34ミリメートルで変態が始まり、43~55ミリメートルで終了し、稚魚になり、成魚の形態に近づく。

[上野輝彌・尼岡邦夫 2025年10月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ボウエンギョ」の意味・わかりやすい解説

ボウエンギョ (望遠魚)
Gigantura chuni

サケ目ボウエンギョ科の深海魚。眼が円筒状に前方へ突出しているのでボウエンギョと呼ばれる。体は細長く円筒形で尾びれの下半分が著しく延長する。体は銀色でうろこがない。口は巨大で胸びれ直下まで裂けている。両あごに鋭い大きな歯をもち,自分より2倍も大きい魚を丸のみにできる。背びれは体の後半部に位置し,しりびれは小さく背びれ後端の下に位置する。胸びれは著しく高い位置にあり大きく,うちわ状に上方に向かって開く。腹びれとあぶらびれはない。全長15cmに達する。発光魚を捕食していることが多い。その際,低照度でもよく機能する望遠眼は目的とする魚の発光を遠くから捜しあて,気づかれずに近づくために役だっていると考えられている。熱帯大西洋の水深300~1000mの層に生息する。ボウエンギョ科Giganturidaeの魚は全世界に約5種が知られており,いずれも望遠眼,巨大な口,鰓孔(さいこう)より上に胸びれのあることで他科の魚と容易に区別される。
深海魚
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

小学館の図鑑NEO[新版] 魚 「ボウエンギョ」の解説

ボウエンギョ
学名:Gigantura chuni

種名 / ボウエンギョ
目名科名 / ヒメ目|ボウエンギョ科
解説 / 望遠鏡のようにつき出た目、するどい歯、長い尾びれなどが特ちょうです。
別名 / ギガンツラ
全長 / 11cm
分布 / 大西洋

出典 小学館の図鑑NEO[新版] 魚小学館の図鑑NEO[新版] 魚について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボウエンギョ」の意味・わかりやすい解説

ボウエンギョ

「コガシラボウエンギョ」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

冬に 4日間暖かい日が続くと 3日間寒い日が続き,また暖かい日が訪れるというように,7日の周期で寒暖が繰り返されることをいう。朝鮮半島や中国北東部の冬に典型的な気象現象で,日本でもみられる。冬のシベリ...

三寒四温の用語解説を読む