1950年代末期に、ブラジルの都会風サンバからジャズやロックの影響を受けて派生した白人向けのポピュラー音楽。ボサ・ノバということばは、歌手・ギター奏者ジョアン・ジルベルトの演奏様式に対して、作曲家・ピアノ奏者・編曲家のアントニオ・カルロス・ジョビンが命名したもので、「新しい感覚」を意味する。サンバに対するボサ・ノバの革新性は、(1)サンバ独自の打楽器アンサンブルをドラム・セットに置き換え、サンバのリズムに基づきながらも黒人色を極力排除したリズム、(2)ブラジルの具象詩と類似点をもつような歌詞、にもっとも顕著に現れている。またボサ・ノバでは旋律、和声、リズムは混然一体となっており、伴奏楽器の主力であるギターは、和音をリズム的に打ち鳴らすように奏される。唱法の特徴としては、伝統歌謡の唱法を取り入れて、鼻声で抑揚をつけずにほとんど話すような口調で歌うことがあげられる。このようなギター奏法と唱法のくふうは、ジョアン・ジルベルトに負うところが大きい。
[由比邦子]
『エレーナ・ジョビン著、国安真奈訳『アントニオ・カルロス・ジョビン――ボサノヴァを創った男』(1998・青土社)』▽『ルイ・カストロ著、国安真奈訳『ボサノヴァの歴史』(2001・音楽之友社)』
1958年ころにブラジルで生まれたサンバの新しい形態。作曲家でピアニストのアントニオ・カルロス・ジョビンAntônio Carlos Jobim(1927-94),歌手でギタリストのジョアン・ジルベルトJoão Gilberto(1931- )らが生みの親で,それまでの野性と熱狂を特徴とするサンバとは対照的に,ウェスト・コースト・ジャズの影響をうけた知的で落ち着いた感覚と新しいハーモニーをもっていた。初期の代表的な曲目は《ジザフィナードDesafinado》《ワン・ノート・サンバSamba de Uma Nota Só》(ともにジョビン作)などだったが,1963年に《イパネーマの娘Garôta de Ipanema》(同じくジョビン作)がアメリカでヒットして以来,ボサノバは商業化され,ソフトタッチのムード・ジャズといった受け止められ方で世界に広まっていった。
執筆者:中村 とうよう
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