リア(読み)りあ(英語表記)Edward Lear

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リア」の意味・わかりやすい解説

リア
りあ
Edward Lear
(1812―1888)

イギリス詩人画家。ハイゲートの株屋の21人のうち21番目の子として生まれる。初め動物学の図版書きとして出発、やがて13代ダービー伯の庇護(ひご)のもとで童詩と挿絵の本の制作にとりかかる。戯詩(リメリック)(5行からできていて、aabbaと韻を踏み、3、4行が他の行の半分の長さしかない)を使って、ことばの遊戯機知と幻想を最大限に推し進め、独特な奇抜な挿絵を自らつけ、ルイス・キャロルと並んでナンセンス文学の大家として知られ、「リメリックの桂冠(けいかん)詩人」と呼ばれる。生涯、癲癇(てんかん)に苦しみ、温かい友人たちに囲まれながら孤独をかこっていた。キャロル同様、童心を相手にしながらそこに繰り広げられるのは傷ついた繊細な感受性であり、ベケットイヨネスコに通じる不条理の感覚である。エリオット、オーデンらがこの形式からかなり影響を受けている。作品は『ナンセンスの絵本』(1856)にまとめられている。1888年1月29日没。

[出淵 博]

『柳瀬尚紀訳『完訳 ナンセンスの絵本』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リア」の意味・わかりやすい解説

リア
Lear, Edward

[生]1812.5.12. ハイゲート
[没]1888.1.29. イタリア,サンレモ
イギリスの詩人,画家。 21人兄弟の末子として生れ姉に育てられ,15歳で自立,大英博物館などで動物画を描き,またラファエル前派の影響をうかがわせる精密な風景画を得意とした。生涯精神障害に悩まされ,1837年以後猫を友として国外を放浪した。リメリック (5行から成る戯詩) にユーモラスな挿絵を付した『ノンセンスの絵本』 The Book of Nonsense (初版,1846,増補,61,63) で最も知られ,これは L.キャロルの「アリス」と並ぶノンセンス文学の傑作とされる。ほかに3冊のノンセンスの本,挿絵入りの紀行がある。

リア
Lear

イギリスの劇作家 E.ボンドの戯曲。 1971年初演。シェークスピアの『リア王』の典拠となった年代記を再解釈し,社会の構造的暴力のもとにおかれたリアの覚醒と死を通して,階級・官僚社会における暴力,資本主義下における個人の疎外などの問題を提示している。不条理演劇への反論としてボンドみずから理性的演劇と定義し,世界に対する積極的意味づけをはかろうとした作品の一つ。

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