ボン教(読み)ぼんきょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボン教」の意味・わかりやすい解説

ボン教
ぼんきょう

仏教導入以前にチベットで行われていた宗教。今日のボン教は9世紀後半以後仏教に同化したもので、古派の教義の影響が濃い。元来は西部チベットのシャンシュン地方に拠(よ)ったムdMu部族の宗教であって、生命神のラblaを祀(まつ)って招福攘災(じょうさい)を旨とした。これをドゥルボンrdol bon(粗いボン)とよぶ。ム部族とチベットをのちに支配するピャーPhyva'(=トンsTong)部族と通婚したのち、死後の祭りを行うシェンgshenの宗教と混淆(こんこう)してシェンラプ・ミボgShen rab mibo(優れたシェンの大人)を開祖とするキャルボン'khyar bon(雑のボン)が生じた。死後、ヤギ、ヤク、ウマなどが七つの谷を越える案内や供をするとして、それらを犠牲にして永遠の父祖の国にたどり着くことを願った。仏教と接触して古代王国の崩壊した9世紀なかば以後急速にその教義を取り入れながら仏教と対立する様相を示し、イラン起源説をとり、左繞(さじょう)礼拝などを行ってギュルボンbsgyur bon(変易ボン)をつくっていった。今日も教団を組織して活動している。

山口瑞鳳

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改訂新版 世界大百科事典 「ボン教」の意味・わかりやすい解説

ボン教 (ボンきょう)
Bon

チベットの宗教。仏教の導入によって衰微した。聖山とされる西部チベットのカイラーサ山に近いシャンシュンの地で,生命神ラblaをまつって招福除災を祈っていたムdMu部族の宗教がもとになり,彼らと通婚した古代チベット王家やその属するピャphyva部族の間でも行われているうちに,占をたて兆をみて医療祈禱を行ったシェンgshenによる宗教も加わり,シェンラプ・ミボを開祖とする宗教とされ,両部族の間に行われるようになったものらしい。敦煌文献には,同胞のいる永遠の死の国に死者をとどけるため,山羊に案内させ,馬に乗り,牝ヤクを供にするとして,これらの動物を犠牲にする儀式が伝えられている。そのほか,イラン系の宗教との関係もいわれるが,真偽は明らかでない。9世紀中ごろ以後仏教から学び,教義の整備が行われた。吐蕃王家の遠祖は6世紀ごろ東遷してヤルルン地方に定着したらしいが,それ以前に分かれた一支族の伝えたボン教と思われるものが四川の金川方面に今日も残っている。
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百科事典マイペディア 「ボン教」の意味・わかりやすい解説

ボン教【ボンきょう】

チベット古来の民族宗教ポン教とも。語源とされるポンパpon-paは王たちの神聖な儀式を司る役職を意味し,祈祷中心とした独自の宗教形態を備えていた。仏教が伝来し,ラマ教(チベット仏教)として栄えるに従って衰微した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ボン教」の解説

ボン教(ボンきょう)
Bon

チベットの土着宗教の総称太古西方から渡来したシェンラップミオが創始したとされ,司祭占卜(せんぼく),占星術,呪術などを行う。最古寺院は1405年に建立されたメンリ寺である。

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