アセタール結合をもつ重合体(ぽりまー)の総称。アセタール結合-O-CH2-Oを主鎖にもつホモポリマー(単独重合体)とCH2-OCH2(CH2)O-の結合との共重合物(コポリマー)に分けられる。これらを主成分とするものがアセタール樹脂である。ポリアセタールは、金属を代替するエンジニアリング・プラスチックとして注目されている。機械的強度と耐熱性においては、ホモポリマーはコポリマーより高いが、熱安定性が悪く、成形時に注意が必要である。一般に、ポリマーの末端をアセチル化して、熱安定性を向上させている。
両タイプに共通する特徴は、摺動(しゅうどう)(すべり摩擦)性と耐摩耗性で、ギアなど摺動部品(二つの部品が相対運動することを「摺動」といい、そういった部分を「摺動部」という)の基準材料となっている。欠点としては、耐熱性が低い(熱変形温度100~136℃)ことと、難燃性を付与できないことなどである。
[垣内 弘]
『片岡俊郎ほか著『エンジニアリングプラスチック』(1987・共立出版)』▽『井上隆編著『ポリマーアロイ活用ノート――材料選択・設計の指針』(1992・工業調査会)』▽『高野菊雄編『ポリアセタール樹脂ハンドブック』(1992・日刊工業新聞社)』
ホルムアルデヒドまたは環状ホルムアルデヒド化合物の重合によって得られる高分子の総称。1930年ころドイツのH.シュタウディンガーは,ホルムアルデヒドが重合し,ポリアセタールをつくることを認めたが,熱安定性が悪く,実用性はなかった。その後アメリカのデュポン社が熱安定性の向上にとりくみ,ポリアセタールの末端をアセチル化することにより,これに成功し,56年にデルリンの商品名で工業化した。また同じくアメリカのセラニーズ社では,ホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンが開環重合することを見いだし,これに少量のエチレンオキシドを共重合させて,共重合ポリアセタールの合成に成功,60年にセルコンCelconの商品名で工業化した(日本での商品名はジュラコン)。
ポリアセタールは,結晶化が速いため成形速度が非常に速く,射出成形が容易で,また機械的性質,耐熱性にすぐれている。このため,機械部品,電気部品,自動車部品など成形品として多用され,金属を代替するエンジニアリングプラスチックの代表として知られている。歯車,ファン,エーロゾル用バルブ,戸車,その他日用品など目につくものが多い。寸法精度も高いため,精密成形品としても使用できる。
ホルムアルデヒドを脱水,精製し,99.9%の高純度にし,-15℃の炭化水素溶媒中で,トリフェニルホスフィンとジフェニルイミンあるいはトリブチルアミンを触媒として重合するか,精製トリオキサンをフッ化ホウ素,塩化アルミニウムなどを触媒として重合して得られる。
重合度は1000~3000。ほとんど射出成形で成形され,成形温度は180~250℃である。ガラス繊維で補強されることもある。製品は乳白色で,軟化点110~125℃。強度,弾性率,耐クリープ性,耐摩耗性,強酸を除く耐薬品性にすぐれている。ポリアセタールのホモポリマーおよびコポリマーのおもな物性は表に示すとおりである。
執筆者:森川 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
分子中に図のような結合をもつ重合体.もっとも簡単な単独重合体は,ホルムアルデヒドのアニオン重合により得られるが,重合体末端が不安定なヘミアセタール構造をもち,この末端から,ジッパー式にもとのホルムアルデヒドに分解するため,熱やアルカリに弱い.
末端をアセチル化処理したものは安定になる([別用語参照]ポリ(オキシメチレン)).トリオキサンと1,3-ジオキソラン,あるいはエチレンオキシドとをカチオン開環重合させた共重合体は,末端ヘミアセタールからの分解が起こっても,ジオキソランあるいはエチレンオキシド単位の部分で分解が止まり,安定な重合体となる.アセトアルデヒドを原料とするもの(R:CH3)もあるが,まだ実用化できるほどのものは得られていない.[CAS 9002-81-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…エンプラと略称されることもある。代表的なものとしては,ポリアセタール,ポリアミド(ナイロン),ポリエステル(PBT),ポリカーボネート,変性PPO(商品名ノリル)があり,汎用エンジニアリングプラスチック(汎用エンプラ)と呼ばれる。エポキシ樹脂,シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂,より耐熱性の高いポリアリレート,PPS,ポリイミド樹脂なども含まれる。…
…メーカーには,三井東圧化学,三菱瓦斯(ガス)化学,信越化学工業,日産化学工業,日本化成,協和ガス化学工業,コープケミカル,東洋ガス化学工業などがある。ガス化学工業の主要な前記3製品のうち,まずメタノールはその大半がホルムアルデヒドになり,ホルムアルデヒドは,ユリア樹脂(尿素樹脂),メラミン樹脂(接着剤や化粧板等の原料)などや,ポリアセタール(エンジニアリングプラスチック,いわゆるエンプラ)などの原料である。アンモニアは,尿素,硫安などの窒素肥料や,ナイロン,アクリルなどの合成繊維の原料をつくるのに使われる。…
※「ポリアセタール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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