イギリスの作家リットン卿(きょう)の歴史小説。1834年刊。紀元79年のベスビオ火山の噴火によるポンペイの壊滅を背景に、当時のローマ文化と風俗、キリスト教と旧宗教の角逐を描く。アテネ人富豪のグローカスはギリシア人の美女アイオーニと相愛の仲にあるが、権謀術数に長(た)けたアイシスの司祭、エジプト人アーバシズは邪恋を抱き、キリスト教に改宗しようとするアイオーニの兄を刺殺し、罪をグローカスに着せる。闘技場でライオンの餌食(えじき)に供せられようとするとき、グローカスは盲目の花売娘ニディアの働きと、おりからの大噴火で救われる。この小説は、イタリア映画を世界的にした史劇の題材として1908年のサイレント時代からたびたび取り上げられ、よく知られるに至った。
[佐野 晃]
『堀田正亮訳『ポンペイ最後の日』(1953・三笠書房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…イタリアの史劇映画は早くから書割を背景に使うことをやめて,実際にある古代の遺跡を舞台にした撮影を意欲的にすすめており,その〈リアリズム志向〉が特色となって人気を得た。ブームの先鞭をつけたのがルイジ・マッジ監督《ポンペイ最後の日》(1908)で,18分弱の短編であった。次いで,エンリオ・グアッツォーニ監督《クオ・バディス》(1912),マリオ・カゼリーニ監督《ポンペイ最後の日》(1913),そして史劇映画の頂点となるピエロ・フォスコ(ジョバンニ・パストローネの別名)監督《カビリア》(1914)が世界的な大ヒットを記録して未曾有(みぞう)の史劇ブームが到来した。…
…作品は多く,社交界小説,政治小説,犯罪小説,怪奇小説,未来小説など多様であり,深さや芸術性には欠けるものの,時代の好みや風潮を巧みにとらえて広い読者に迎えられた。社交界の上流青年の恋と政治の遍歴物語《ペラム》(1828),《アーネスト・マルトラバーズ》(1837),犯罪を社会問題とし,犯罪者を同情的に描く《ポール・クリフォード》(1830),《ユージン・アラム》(1832),ローマ時代の歴史小説《ポンペイ最後の日》(1834)などが有名である。日本でも《アーネスト・マルトラバーズ》(丹羽純一郎訳《花柳春話》1878)をはじめ,多くの作品が明治10年代に翻訳され,西洋小説翻訳史上,D.デフォーやJ.ベルヌらと並んで先駆をなした。…
※「ポンペイ最後の日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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