改訂新版 世界大百科事典 「マイルカ」の意味・わかりやすい解説
マイルカ (真海豚)
common dolphin
Delphinus delphis
ハクジラ亜目マイルカ科の哺乳類。ハセイルカとも呼ばれる。世界中の温帯~熱帯に分布するくちばしの長い美しい外洋性のイルカ。従来マイルカはマイルカD.delphis一種よりなるとされていたが,最近はこれをマイルカD.delphisとハセイルカD.capensisの2種に分けることが多い。日本近海では日本海と東シナ海,紀伊半島以南の太平洋に分布し,吻が長い方が後者に該当し,四国~北海道にかけての太平洋に分布する吻の短い方が前者にあたると推定されているが,詳細な研究が待たれる。最大体長2.5m。背面の黒褐色域と,胸部体側の白色ないし黄色域との境がアーチ状をなす。黒条が目から肛門にのびることがある。背びれの中央は灰白色。吻(ふん)は細く,歯は上下左右に各40~60本ずつある。歯数や体色には地理的変異が著しい。頭骨の口蓋部には,中央のキールの左右に深い溝があるのが特徴。春と秋に,11ヵ月の妊娠の後,体長約80cmの子を生む。ふつう数百~1000頭以上の群れで生活し,カマイルカやスジイルカと混群もつくる。船首波に乗る。ハダカイワシ,カタクチイワシ,イカなどを捕食する。かつて黒海では沿岸諸国の漁獲により資源が激減した。東太平洋のマグロ巻網や,イカ刺網,大目流し網による混獲も少なくない。日本のイルカ漁業の対象とはなっていない。日本では,各土地ごとにもっとも一般的なイルカをマイルカと呼ぶことがあるので注意を要する。
→クジラ
執筆者:粕谷 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報