改訂新版 世界大百科事典 「ハンドウイルカ」の意味・わかりやすい解説
ハンドウイルカ (半道海豚)
bottlenose dolphin
Tursiops truncatus
ハクジラ亜目マイルカ科の哺乳類。バンドウ,クロとも呼ぶ。世界中の温帯,熱帯に分布するくちばしのある体長3.5mに達する大型イルカ。背面は黒褐色で,腹部の白色域との境は不明りょう。吻(ふん)は太くて短く,歯は上下左右に各18~26本ずつある。日本近海では暖流系の沿岸や沖合域に多く,ふつう20~50頭の群れで生活し,イカやアジ,サバ,ボラなどの魚類を食する。オキゴンドウ,コビレゴンドウ,ハナゴンドウなどとも混群をつくり,船首波にもよく乗る。妊娠期間は12ヵ月で,子は体長1.3mで生まれ,1~2歳で離乳する。5~13歳,体長2.6~3.1mで性的な成熟に達する。雄は雌よりも平均15~20cm大きくなる。生涯繁殖可能で,最高寿命は約45年。出産は2~3年に1回で,繁殖期は日本近海では2~10月,盛期は6月にある。飼育しやすいので水族館用の需要も多いが,日本での漁獲の多くは食用(太地)と,害獣駆除(壱岐)が目的で,政府は年間約1000頭の捕獲を許可している(1997年現在)。沿岸の網漁業によっても混獲されている。九州以南や,三宅~小笠原諸島方面の沿岸域には,体が小さく(3m未満),体表に斑点をもつ別系統も分布する。
執筆者:粕谷 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報