改訂新版 世界大百科事典 「エイレナイオス」の意味・わかりやすい解説
エイレナイオス
Eirēnaios
生没年:130ころ-200ころ
いわゆる古カトリック教会の重要な教父。ラテン名はイレナエウスIrenaeus。おそらく小アジアのスミュルナ出身で,ヨハネの弟子とされるポリュカルポスに学んだ。マルクス・アウレリウス帝のときの小アジアでの迫害はローマ滞在中だったので免れ,以後リヨンの司教となって終生その地の教化に努めた。殉教者とされているがこの点はたしかではない。彼は使徒教父にならって聖書の伝統を重んじ,キリストにおける創造と救済の一致という聖書的神観・救済史観を明らかにしたほか,聖職者による使徒の継承とローマ首位権とを主張した。〈教会の教えの真理は祭壇にある〉という。この教会的伝統主義は異端反撃と対をなしていた。180年ころに書かれたとみられる《異端論駁》はウァレンティヌスやバシレイデスなど,2世紀のいわゆるキリスト教的グノーシス主義と戦ったもので,古代教会の重要な記録となっている。
執筆者:泉 治典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報