マチャード(読み)まちゃーど(英語表記)Manuel Machado

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マチャード」の意味・わかりやすい解説

マチャード(Antonio Machado)
まちゃーど
Antonio Machado
(1875―1939)

スペインの詩人セビーリャに生まれ、マドリードに移り教育を受ける。一時パリにも滞在。処女作『孤独』(1903)は甘美な世紀末的憂愁と近代主義(モダニズム)の影を残す。これは1907年『孤独、回廊、その他の詩』(邦訳寂寞』)と改訂される。いっさいの装飾性を去り、「精神の深い鼓動」に耳を傾ける詩人の姿勢がある。同年カスティーリャ地方のソリアにフランス語教師として赴任、まもなく結婚。代表作『カスティーリャの野』(1912)の契機となった。荒涼とした風景、それに投影されるスペインの運命、妻との愛と死別の苦悩が荘重な叙情の調べで歌われる。『新詩集』(1924)は民衆詩の短句型を用いて、内的省察を表現、新しい詩境を開いた。ほかに2人の仮想の詩人、哲学者に擬した内省的散文集と兄マヌエルとの合作になる数編の韻文劇がある。36年のスペイン内戦では共和政府側につき、難民とともに国境を越え、39年亡命先の南フランス、コリュールで生涯の幕を閉じた。スペインで最高の詩人の1人に数えられる。

[有本紀明]

『鼓直訳『寂寞』『カスティーリャの野』(『世界名詩集大成14 南欧・南米』所収・1962・平凡社)』


マチャード(Manuel Machado)
まちゃーど
Manuel Machado
(1874―1947)

スペインの詩人。セビーリャの生まれ。アントニオ・マチャードの兄。大学で文学専攻、マドリード、パリで文学的ボヘミアン生活も経験している。早くからアンダルシアの民衆性と優美さに根ざした詩を書いている。彼の詩の洗練された貴族的雰囲気はフランスの象徴主義、さらに当時一世を風靡(ふうび)していた近代主義(モダニズム)の影響による。『たましい』(1900)、『カンテ・ホンド』(1921)はその代表的な例。多彩な歴史、芸術に題材をとる詩も含め、彼の作品はその軽やかさと感覚性だけで評価されがちだが、背後にある、とくに後年の深い思索的傾向も考慮されねばならない。ほかに弟アントニオとの合作による『ラ・ローラは港へ』(1930)など数編の韻文劇がある。アカデミー会員。

[有本紀明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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