マディヤプラデーシュ(その他表記)Madhya Pradesh

改訂新版 世界大百科事典 「マディヤプラデーシュ」の意味・わかりやすい解説

マディヤ・プラデーシュ[州]
Madhya Pradesh

インド,デカン高原北部に広がる州。東をビハールおよびオリッサ,西をグジャラートおよびラージャスターン,南をマハーラーシュトラおよびアーンドラ・プラデーシュ,北をウッタル・プラデーシュの各州と接する。総面積約44万2800km2は,全国25州中,国境の確定していないジャンムー・カシミール州を除くと第1位の広さである。人口6618万(1991)は,全国第6位を占める(6035万,2001)。州域のほとんどが高原上に広がり,州都ボーパールは標高625mに位置する。州は45県よりなり,公用語としてヒンディーを使用する。州域は,西流する州最大のナルマダー川を東西の軸とし,その北にはビンディヤ山脈が,また,南側にはサトゥプラSatpura山脈が東西に平行に連なる。東部は,東流してガンガーガンジス)川に合流するソーン川およびベンガル湾にそそぐマハナディ川の上流域で,丘陵山地が広がる。州全域が亜熱帯モンスーン地域にすっぽり覆われ,年降水量は,西部の1000mmから東部の1400mmまでの差がある。このうち約90%が6~9月の4ヵ月間に降る。気温は州都ボーパール付近が最高で,5月には日最高気温が平均40.2℃まで上昇し,4月と6月に35℃以上の酷暑となる。

 2000年11月,州東部(オリッサ州と接する側)はチャッティースガル州(州都ライプル)として分離した。

 住民の80%は農村地域に居住し,経済基盤は農業に多く依存する。530万世帯が1850万haの耕地で農業に従事するが,灌漑耕地面積は15%にすぎないため,生産性は低い。おもな作物は,ジョワール(モロコシ),小麦,米,まめ類,ナタネ,綿花,サトウキビなどが広く栽培される。最近では,ダイズの生産が急増してきたし,東部高原地域でのオレンジ生産もますます盛んである。南東および東部一帯は,各種の鉱産資源に恵まれる。代表的鉱石は,石炭,鉄鉱石,石灰石,ボーキサイト,銅,マンガン,ダイヤモンドなどで,約600の鉱山を数える。工業発展も進み,州内に198の大規模工場と7万5000以上(1980)の小規模工場が立地する。1955年にソ連の技術・資本援助で始まった製鉄所の建設は,ビライナガル工業都市を生んだ。ボーパールの国営重電機器工場もインドを代表する近代的工場である。ほかにコールバKorbaのアルミニウム工場,ホーシャンガーバードHoshangābādの製紙工場,デーワスDewasの紙幣印刷工場,ネーパナガルNepanagarの新聞紙工場などが代表的工業といえる。繊維紡績業は,各地に23工場を数える。しかし,45県中36県は工業低開発地域とされ,今後の企業誘致が待たれている。

 州政府が最も力を入れているのは,ダムの建設による灌漑地域の拡大と水力発電所の建設である。これまでに完成したのは,チャンバルChambal,ハスデーオHasdeo,バルナ・ラビシャンカル・サガルBarna Ravishankar Sagar,パイリPairiおよびシンドSindの各プロジェクトで,新たに50万haの灌漑耕地を生み出した。また,ダム付設の水力発電所は,州内総発電量130万kW(1980)のうち約15%を担う。しかし,州の電化村率は34.2%(1981)でしかなく,全農村人口の54%が電力恩恵を受けるにとどまる。州内全農村に電力の普及がみられる南部のカルナータカ州などに比べると,農村生活環境改善は,依然として州政府の大きな政治課題である。なお,州の北端に位置するカジュラーホには,ヒンドゥー・エロティシズム彫刻をふんだんに取り入れた9~12世紀の寺院群の遺跡があり,インドを代表する国際観光地となっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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