日本大百科全書(ニッポニカ) 「カジュラーホ」の意味・わかりやすい解説
カジュラーホ
かじゅらーほ
Khajurāho
インド、マディヤ・プラデシュ州北部のブンデルカンド地方にある町。ここにあるヒンドゥー教石造寺院群によってその名が知られる。これらの寺院群は10~13世紀にインド北半に覇を唱えたチャンデーラ王朝の最盛期に造営され、この地が同王国の宗教の中心地であった。この寺院群は1986年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。寺院の造営にもっとも力を尽くしたのは第8代ダンガ王(950―1008ころ)で、カンダーリヤ、ビシュバナータ、パールシュバーナータなど大規模な寺院が建立されたが、彼より3代あとのビディヤーダラ王のときイスラム軍の中インド侵入を受けてからチャンデーラ朝はしだいに衰え、その後は寺院の建立はみられなくなった。ジャイナ教を含むヒンドゥー教の寺院群は東西約2キロメートル、南北約3キロメートルの平地に西、東、南の3群に分かれ、小さな堂を含め現在20ほどを数える。寺院の構造はみな東向きで、平面はラテン・クロス状をなし、本尊を安置する神殿は上部が高い塔(シカラ)になっているのが特色で、内部は柱頭、長押(なげし)、天井などに彫像や装飾彫刻が埋められている。寺院の外壁は神像をはじめさまざまな姿態の男女の彫像で覆われ、明るい官能性を表したものが多い。
[永井信一]