マニャスコ(英語表記)Alessandro Magnasco

改訂新版 世界大百科事典 「マニャスコ」の意味・わかりやすい解説

マニャスコ
Alessandro Magnasco
生没年:1667-1749

生地ジェノバを中心に活躍したイタリアの画家。別称イル・リッサンドリーノil Lissandrino。後世の印象主義,さらには表現主義を予告するような,反古典主義的できわめて特異な作風を示す。幼時に画家の父から教えをうける。1682年ミラノに赴き,アッビアティFilippo Abbiatiにベネチア派風の手法を学び,J.ティントレットの明暗法を身につける。その後フィレンツェ等に旅をするが,晩年の1735年以後はジェノバで制作。僧侶盗賊ジプシーたちを海景山岳の中に描き出す。画面にちりばめられたきわめて小ぶりの人物はマニエリスム風に引き伸ばされる。J.カロやS.ローザの影響が顕著である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マニャスコ」の意味・わかりやすい解説

マニャスコ
まにゃすこ
Alessandro Magnasco
(1667―1749)

イタリア後期バロックの画家。ジェノバ生まれ。画家であった父ステファノの工房で修業したのち、ミラノに行きベネチアの画家フィリッポ・アッビアーティに師事。当初は肖像画を手がけていたが、サルバトール・ローザSalvator Rosa(1615―73)からの影響もあり、しだいに量塊性のない小さな人物が画面に現れるようになる。一時フィレンツェに出てトスカナ大公の宮廷画家となる。1711~35年ミラノに居住し、その後はジェノバに戻って、死ぬまでそこで活動した。彼の得意とした主題は、修道僧、隠者、ロマ(かつてはジプシーとよばれた)といった社会から疎外された人間、仕事に精を出す職人、そして嵐(あらし)に激しく揺さぶられる森などである。自由奔放な筆致と色斑(しきはん)を駆使した動勢の強い画面は、印象派の先駆的要素を含んでいて、その作風の独創性には伝統的な形式の打破がみられる。

[小針由紀隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マニャスコ」の意味・わかりやすい解説

マニャスコ
Magnasco, Alessandro

[生]1667.2.4. ジェノバ
[没]1749.3.12. ジェノバ
イタリアの後期バロックの画家。通称 Il Lissandrino。父ステファーノに学び,のちにミラノに出て F.アビアティのもとで修業。初め肖像画家として出発したが,のちには廃虚,修道院などのロマンチックな風景,あるいは細長く引き伸ばされた人物像,特に修道士尼僧,ロマ,審問官などを暗い色彩と激しいタッチで描いた。一時フィレンツェの宮廷に仕えたが,1711~35年にはミラノで活躍。その後はジェノバに戻った。また C.スペラ,C.タベラ,M.リッチらに協力し,風景画の中に人物を描いた。主要作品『キリスト洗礼』『ユダヤ教会堂』。

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