日本大百科全書(ニッポニカ) 「マニャスコ」の意味・わかりやすい解説
マニャスコ
まにゃすこ
Alessandro Magnasco
(1667―1749)
イタリア後期バロックの画家。ジェノバ生まれ。画家であった父ステファノの工房で修業したのち、ミラノに行きベネチアの画家フィリッポ・アッビアーティに師事。当初は肖像画を手がけていたが、サルバトール・ローザSalvator Rosa(1615―73)からの影響もあり、しだいに量塊性のない小さな人物が画面に現れるようになる。一時フィレンツェに出てトスカナ大公の宮廷画家となる。1711~35年ミラノに居住し、その後はジェノバに戻って、死ぬまでそこで活動した。彼の得意とした主題は、修道僧、隠者、ロマ(かつてはジプシーとよばれた)といった社会から疎外された人間、仕事に精を出す職人、そして嵐(あらし)に激しく揺さぶられる森などである。自由奔放な筆致と色斑(しきはん)を駆使した動勢の強い画面は、印象派の先駆的要素を含んでいて、その作風の独創性には伝統的な形式の打破がみられる。
[小針由紀隆]