日本大百科全書(ニッポニカ) 「マラケシュ」の意味・わかりやすい解説
マラケシュ
まらけしゅ
Marrakesh
アフリカ北部、モロッコ南西部の都市。カサブランカの南238キロメートル。アトラス山脈北麓(ほくろく)のハウズ平野に位置する。人口74万5541(1994)、市域の人口97万8045(2014推計)。同国南部の中心となるオアシス都市で、山地と平野を結ぶ農産物の集散地として商業活動が盛んである。皮製品製造、織物の伝統工芸やセメント、食品加工の近代工業もある。歴史は古く、1062年ベルベル人による最初のマグレブ統一王国ムラービト朝の首都として建設された。12世紀にこれを滅ぼしたムワッヒド朝下でも首都として栄えた。その後も王家の居住地となることが多く、マグレブ地方におけるイスラム文化・学術の中心地の役割を果たした。またサハラ砂漠を横断する隊商路のかつての北の基点であった。この地域特有の赤い城壁で囲まれた旧市街メディナには古い王宮、廟墓(びょうぼ)、モスク、神学校(マドラサ)、市場(スーク)、職人街、ジェマ・エル・フナ広場などがある。この地域は1985年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。フランス人のつくった新市街ゲリーズはその西にある。冬でも暖かく、国際的な観光地になっている。
[藤井宏志]