数学者、フラクタルの創始者。ポーランドのワルシャワに生まれる。1936年に家族とともにフランスに移住。コレージュ・ド・フランスの数学科教授でブルバキのメンバーでもあった叔父シューレム・マンデルブロSzolem Mandelbrojt(1899―1983)の影響を受け、数学者を志す。1944年にパリ工科大学に入学し、ポール・レビPaul Lévy(1886―1971)らに教わる。1947年の卒業後はアメリカ、カリフォルニア工科大学に学び、1952年にパリ大学から博士号を授与される。1958年よりIBMトーマス・J・ワトソン研究所に在籍、1993年より名誉特別研究員。1999年よりエール大学数学部数理科学科教授。
1970年代に、自然界に見られる幾何学を包括的に扱う数学概念・手法を提唱し、自ら「フラクタルfractal」(「不規則な破片になった」の意をもつラテン語のフラクトゥスfractusからの造語)と名づける。フラクタルは、特徴的な長さをもたない、自己相似性がある(拡大・縮小しても見え方が変わらない)、いたるところ微分不可能である(細かい構造があって滑らかでない)といった性質をもつ。「特徴的な長さ」characteristic lengthとは、たとえば、正三角形の一辺の長さのように、その幾何学図形の性質を決定づけるような長さを意味する。自然界に見られるフラクタルの多くは厳密に数学的なフラクタルではないが、たとえば雪片曲線(またはコッホ図形)とよばれる人工図形は、厳密なフラクタルの例である。
フラクタルは非整数次元の幾何学としてとらえることができる。たとえば、雪片曲線は、一次元の直線よりは複雑だが二次元の平面よりは単純であり、そのフラクタル次元(相似性次元)は約一.二六次元と計算できる。
マンデルブロは、純粋数学よりも応用数学を目ざした結果、それまで扱えなかった自然界の実際の幾何学構造に対応する新たな数学概念を発見した。その思想的な影響は、物理学、天文学、生物学、映画のCG技術、音楽、経済学など人間文化の隅々にまで及んでいる。
マンデルブロは、フラクタル幾何学に関係する業績でバーナード・メダル(1985)、フランクリン・メダル(1986)、アレクサンダー・フォン・フンボルト賞(1987)、スタインメッツ・メダル(1988)、レジオン・ドヌール勲章(1989)、ネバダ・メダル(1991)、ウォルフ賞(1993)、本田賞(1994)、日本国際賞(2003)などを受けている。
[竹内薫]
『B・マンデルブロ著、広中平祐監訳『フラクタル幾何学』(1984・日経サイエンス社/ちくま学芸文庫、上下)』▽『高安秀樹著『フラクタル』(1986・朝倉書店)』
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新