科学技術分野で独創的・飛躍的な成果をあげ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献した人物に対し、国際科学技術財団が贈る日本の賞。「日本にもノーベル賞のような賞が必要だ」との構想を基に、1985年(昭和60)から授与が始まった。「物理、化学、情報、工学」領域と「生命、農学、医学」領域があり、各領域について年ごとの授賞分野を選定・発表する。授賞分野の選定から3年かけて、内外から推薦された500~1000人を審査し、受賞者を選ぶ。ノーベル賞が基礎科学に重点を置くのに対し、日本国際賞は実用性を重視するという特徴がある。授賞対象者は生存者のみで、受賞者には賞状、メダルと分野ごとに賞金1億円(2020年以降)が贈られる。受賞式には天皇と皇后、内閣総理大臣、衆参両院議長、最高裁判所長官らが出席する。
1981年、鈴木善幸(ぜんこう)政権の総理府総務長官中山太郎(1924―2023)が「戦後日本の復興は国内外の科学技術に負うところが大きく、国際社会への恩返しの意味で、日本にノーベル賞並みの世界的な賞の創設を」と提言し、この構想に賛同した松下電器産業(現、パナソニック)創業者の松下幸之助(こうのすけ)が私財を寄付して実現した。1982年に運営主体となる日本国際賞準備財団(現、国際科学技術財団)が発足し、1983年に閣議決定し、1985年に第1回受賞者を発表した。2023年(令和5)までに108人に日本国際賞を贈っており、このうち14人がノーベル賞を受賞している。ノーベル賞の登竜門としては、アメリカのラスカー賞Albert Lasker Basic Medical Research Awardやフランクリン・メダルBenjamin Franklin Medal、イスラエルのウルフ賞Wolf Prizeなどがあるが、日本国際賞はこれに準じた賞として知名度があがっている。なお日本には日本国際賞のほか、稲盛財団が運営する京都賞Kyoto Prizeがあり、先端技術、基礎科学、思想・芸術の3分野で授賞者を決定している。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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